|はじめに|

 私達は,ここ何年か大学で天文学の講義を担当する機会があった.ご承知のように,大学における天文学の講義は,一般教養としての講義と,専門的な自然科学の教育課程の一部としての講義,天文学を専攻する学生のための程度の高い講義の3種類に分かれている.私達の感じたところは,いわゆる一般教養の教科書は別として専門課程の一部としての講義にふさわしい教科書が少ないということであった.やや程度の高い内容を盛り込んだものはあるのであるが,学生がよく理解するうえで不可欠な演習問題がないなど,もうひとつ充分でないように思われた.天文学に対する関心は年々高まり,優れた解説書なども多く出ているが,今回改めて私達の教科書を上梓することに決定したのは,ひとつにはこのような教科書の谷間とでもいうべきものを埋めたいと考えたからである.
 そこで,両名の講義ノートを突き合わせ,独り合点に陥っているところを改めて作り上げたのが,この書である.しかし,何せ最新の研究成果が次々と天文学を書き換えつつある今日,私達自身全ての分野の新しい結果を充分に理解しているとは言えず,果たして誤りがないかどうか自信がない.しかし,講義を続けなければならないのが私どもの仕事であるので,手の内を伏せていても,いずれ学生には迷惑をかけていることになる.それよりは恥をさらして大方の御叱正をいただいた方が,かえって良心的であろうと考えた次第である.お気付きの事柄について,何かとご注意いただければ幸いである.
 なお,演習問題はかなり容易に見えるものもとりあげた.しかし,大学入試などの答案を見たりすると,一見容易な問題にも意外にてこずるのが,天文学なのだと思わされる.対象があまりにも非日常的なので常識が成り立たず,そのため容易そうな問題も,けっこう丁寧に解かなければならない.そういう意味で,大学生の諸君にも,改めて頭を天体の動きに慣らすということで有用であろう.
 私達の講義を聴講し,あるいは試験を受けるなどして,私達をあるいは励まし,あるいは教育してくれた諸大学の学生諸君の果たした役割は,この教科書をまとめるうえで極めて大きかったと思うので,記して感謝したい.


1986年12月
著者

 
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