|はじめに|

 本書の目的は、夜空の星々に強い興味や関心をお持ちの方、また雑踏から離れて星を眺め心からリフレッシュしたいとお考えの皆さんを、星空散歩に誘うことにあります。実際に星空散歩に出かけて、自分たちの位置を知るためには、まず自分が一体何を見ているのかを理解しなくてはなりません。星や星座の名前を知れば、“天にまします我らが隣人”と言うべき星々とも親近感が持てるようになるでしょう。

 星座を巡りながら散歩していくにつれて、きっとあなたは、夜空の広大さや静寂の時を味わうことでしょう。本書の第 3 部には、星座にまつわる伝説が紹介してありますので、是非目を通してみて下さい。紹介した伝説を読んでから、夜空の星々を眺めると、より大きな感動を味わえます。星座を見て動物や人をイメージした当時の人々の思いやロマンを知れば、あなたにとって星々はどんどん身近な存在になっていくでしょう。

 本書の星空散歩では、まず夜空で一際明るく輝く星々を中心にたどっていきます。そして、明るく輝く星に慣れ親しんで頂いた後で、この明るく輝く星々をたよりにしながら、周囲の暗い星についても取り上げていきます。

 星座を見つけることは、そんなに簡単なことではありません。まず、星座同士の位置関係を見ていきましょう。また、各星座までのたどり方の違いについて知れば、それが星座を見つける最善の方法にもなります。

 古代から、人々は星を眺め星を手がかりにしながら、海を航行したり、砂漠を横断したり、種を蒔く時期や収穫の時を知ったり、星にまつわる伝説をつくったり、変化する季節を区分したり、寺院の礼拝堂も夜空の星々に向けて造られたりしてきました。また、当時の人々は、明るく輝く星々をつなぎあわせて形のパターンにして、星々のことを知る手がかりにしました。この形のパターンが、現在の星座の原型に相当します。

 星座を記した 5,000 年以上も前の記録が存在します。約 2,400 年前の古代ギリシャの天文学者エウドクソスは、プラトンに学び、星座のような星のパターンを整理しています。また、約 2,100 年前に亡くなったプトレマイオスは、今日の星座にも採用されている 48 種類の星座を挙げています。後に、バイアー(Johann Bayer 1572-1625)、ヘヴェリウス(Johannes Hevelius 1611-1687)、ラカーユ(Nicolas de Lacaille 1713-1762)によって、さらに多くの星座がプトレマイオスのリストに付け足されました。

 現在、天文学の専門家たちの間では、88 の星座が認められています。また専門家たちは、それらの星座を、星同士を結んでできるような“図形”やパターンとしてではなく、単に空の領域区分のために用いています。これまで、星座は“万人の合意が得られるような”やり方で決められてきたわけではありません。むしろ、あなたにも、自分なりのやり方でいろいろな星座をつくる自由があることを忘れてはなりません。星空散歩に出かける前に、二つのことを知っておかなくてはなりません。それは、夜空の中で距離を測る方法と、星の明るさを測る方法です。この二つの方法について取り上げた後で、星図の活用方法について説明したいと思います。

 第 2 部の「星空を散歩しよう」では、星座のイメージを持っていただくために星の集まりの絵や略図が示してあります。その星の集まりの中には、たいていの場合(いつもというわけではありませんが)、簡単に見ることができるくらい明るい星が含まれています。紹介した星座のパターンの中には、これまでにないパターンの星座もありますが、星座の姿をうまくイメージして頂くためのものです。

 分かりやすく説明するために、それぞれの星座の各星に番号を付けたり、名前を付けたりしてあります。お望みの星を簡単に探し出せるため、あなたの星空散歩のお役にも立つことでしょう。図の中には、星座に至る何種類かの道筋が示してあります。その道筋をたどることによって、あなたは星同士の位置関係を実感することができるでしょう。

 広く知られている星座にまつわる伝説の一部には暴力的で感情を損なうような表現があり、戸惑いを覚えました。勝手ながら筆者の責任のもとで、その部分を修正したりカットしたりしてあります。そのまま次世代へと受け継がれる伝説があれば、中には内容に手が加えられていく伝説もあっていいように思うのです。  本書は南半球に在住の方々に利用していただくわけですが、赤道の南側に住む方だけでなく、赤道付近の北側に住む方々にも十分ご利用いただけます。 また、北半球については、本書の姉妹版「星空散歩ができる本―北半球版―」をご覧下さい。

 では、さっそく星空散歩に出かけましょう。リラックスして楽しくお過ごし下さい。

 
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