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古来,多大の水産物を利用してきたわが国では,水産動物学という専門領域はずいぶん古くから認識されていたようである.
“魚類ハ脊椎動物中最モ劣等ノ位置ニアリ 而シテ此類ハ尽ク水中ニ棲息スルノ種類ナルガ故ニ其造構水中ヲ運動スルニ適ス……又体ノ両側ニ線アリ 通常ハ1本ニシテ稀ニハ7本ニ至ル 而シテ其用ハ詳カナラズト雖ドモ感触ノ機能ヲ有スルナラン”(内村鑑三全集1,岩村図書)
これは約100年前に内村鑑三さんが水産伝習所で行った水産動物学の講術筆記手稿(1889)の一節である.この手稿は全文が残っていないので講述の全容は明らかでないが,有用種全般にわたって充実した講述であったと推察できる.
たとえばマダラやニシンなどについては細部にわたって解説されているし,ウミガメやスッポンについては生態から肉の利用法にいたるまで詳しく述べられている.
その後,水産学の研究・教育の発展に伴って,数篇の水産動物学の成書が順次出版されているが,魚類の部分を省いたものが大勢を占めている.水産業の対象として重視される魚類を重点的に解説する目的で,魚類学と題する成書が多く出版されるようになって,この様式は定着したように思われる.
著者らは水産動物学の講義を重ねるうちに,魚類を別扱いにすることなく,水産動物全般について総合的に解説した成書の必要性を痛感し,基礎的事項を中心にして取りまとめたのが本書である.近年,水圏に生息する動物の分類,生理,生態などに関する研究の進歩はまことに目ざましく,日を追って多数の新しい情報が加わりつつあり,これらのすべてを整理してまとめるには種々の面で多くの困難を伴う.本書では分類群を中心に解説を試みたが,紙幅の都合でその構成には分類群によってかなりのむらがあり,また全く省略した分類群もあり,当初の意図に反して新鮮味を欠くものになってしまった点はいささか心残りである.不備な点は動物学の視点に立ってまとめられた専門書に譲ることとし,巻末に総合文献を列挙したので参照していただきたい.
(以下省略)
1990年2月1日
著者ら
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