|
近年琵琶湖をはじめとして全国各地の湖沼やダム湖などで淡水赤潮が頻発に発生し、社会問題になっている。 そもそも赤潮という言葉は、海で起こる特定種のプランクトンの大発生とその表層集積減少を指す言葉であるが、最近、琵琶湖などで起こっているプランクトンの異常発生現象の中には、その外観が海の赤潮によく似ているものが多いことから新聞やテレビでは淡水域のものも赤潮と呼ぶようになってきている。
最近は環境庁でも、淡水域で起こるプランクトンの異常発生現象の中で、外観が褐色ないし黄色味を呈し表層水中に集積するものに対して淡水赤潮という用語を公式に使うようになっている。淡水赤潮を起こす生物としては、琵琶湖でのウログレナUroglena や各地のダム湖でのペリディニウムPeridiniumなど、黄色鞭毛藻類または渦鞭毛藻類に属するものが多い。
淡水赤潮が周辺の住民や産業に与える影響としては、(1)赤潮の発生時にはその水を利用している上水道水に不快臭をつけること、(2)浄水場でろ過障害起こさせること(3)その水を取り入れている養魚場で養殖しているアユなどの魚類をへい死させることがあること、(4)赤潮の最盛期には周辺の住人に直接異臭を感じさせる場合もあること、(5)著しい場合には水域の景観を損なうことなどがあげられる。またこれらの実害の他に、(6)赤潮は一般に環境汚染の象徴と倣されているため、その発生は水域のイメージ低下につながるが、これも淡水赤潮の大きい社会的影響であるといえよう。
このような社会的背景から環境庁水質保全局では、淡水赤潮の問題に対処するために1979年9月淡水赤潮研究会を発足させた。
石田祐三郎・岡市友利・門田 元(座長)・坂本 充・中西正巳・中原紘之・根来健一郎・畑幸雄・安野正之・吉田陽一(50音順)の10名がその構成メンバーである。
淡水赤潮の対策を考える場合に、まず必要なその発生のしくみを明らかにすることである。そこでこの研究会では、淡水赤潮の発生機構を解明するためにはどのような研究が必要であるのかを検討し、次にそのうちのどこまでがその時点で明らかにされているかを調べ、今後どのような調査・研究が必要であるのかについて整理を行うことにした。
この研究会での検討結果は、1984年3月に中間報告として取りまとめられたが、この領域の研究はその後も著しく進展し、新しい知見も多数得られているので、本書では枠組みとしてはさきの研究会での検討内容を踏襲しながら、その後の新しい研究成果を大幅に取り込み、現時点での淡水赤潮に関する知見を網羅したものにしようと努めた。なお、1章ないし6章は、執筆者の研究成果に重点を置きながら総説的性格をも持たせたものとし、7章および8章はそれぞれ、琵琶湖及び永瀬ダム湖での調査研究を中心としたケーススタディとしてとりまとめた。
本書は大学や各種試験研究機関の研究者・技術者のみならず行政機関の担当者の方々にも利用されることを念頭において編集した。
|