|はじめに|

 これまで、地球表面の約7割を覆う水圏には、無限の資源が包蔵されていると考えられてきた。しかし200海里時代に入ってからは、次第に資源の有限性が認識されるようになり、生物資源については、その再生産や有効利用に関する抜本的な検討が進められている。このような背景のもとで、近年、食糧ならびに生化学資源としての水産物の特性について膨大な研究業績が発表され、また新しい科学・技術に基づく食品の貯蔵・加工法が開発されつつある。
 水産食品学は、食糧としての水産動植物の性状と貯蔵・加工に関わる学理を体系づけたものである。本質的には生物学、化学、および物理学を基盤とするものの、これらが有機的に関連し合った学問領域であり、殊に最近の高度利用技術については、いわゆる学際的な研究成果が導入されることも多い。したがってこれを十分に把握するには、幅広い知識をもつことが要求される。 
 本書は、水産食品に関する最新の業績を包含しながら、その広範な領域を集約したものである。

 内容については、特に水産動植物の生化学的ならびに栄養学的特性、水産食品の変敗の要因と保蔵原理、貯蔵・加工に伴う肉質の変化、各種水産製品の製造原理などに力点を置き、10名の執筆者が資料を交換し、記述を査読・調整し合って共著の実を挙げるように努力した。また、読者の便を考慮して、主要な用語や化学名についてはできるだけ英名や化学式・構造式を併記することとした。
 大学において水産化学や水産利用学を専攻する学生諸君の教科書として、また水産関係の研究者や技術者の参考書として、本書が活用されることを切望する。もちろん、食糧工学、家政学など多くの分野の識者により一読されることも念願としている。

 
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