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近年,食品工業における技術の進歩,輸入食品の増加,嗜好の多様化などにより,多種多様な食品が大量に供給され,豊かな食生活が享受できるようになってきた.しかし一方では,細菌などによる汚染,有毒・有害化学物質の混入,食品添加物とその表示に関する問題など食品の安全性確保に関する国民の要望はますます強くなってきている.
日本では,毎年かなりの数の食中毒事件が発生しており,病原大腸菌 O157 による 1 万人近い患者と 10 人を越える死者の発生は記憶に新しい.その他にも小型球形ウイルスによる新しい食中毒も発生している.また,1998
年 7 月には亜ヒ酸入りカレー事件では 67 人の急性ヒ素中毒患者が発生し,そのうち 4 人が死亡している.さらに,1996 年以降,内分泌撹乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)が大きな関心を集めている.
例えば,ゴミおよび産業廃棄物の焼却炉からのダイオキシンによる環境汚染,学校給食で使われているポリカーボネイト樹脂製食器からのビスフェノール A の溶出がその代表的なものである.その他の環境ホルモンを含め,今後,食品衛生上重要な問題となることは必至である.
上述のように,新たな食中毒事件の発生あるいは将来,我々の健康を損うような物質による食品汚染,環境汚染が懸念されている.そのような中で,食品衛生学の役割はきわめて重要といえる.
さて,食品衛生に関する法律として食品衛生法が定められている.社会の進展に対応して改正が行われてきたが,平成 7 年(1995 年)5 月大幅に改正され,1
年後すなわち平成 8 年 5 月より施行された.大きな改正点としては食品添加物の見直し,とくに天然添加物の明確化,および総合衛生管理製造過程の導入である.これは危害分析・重要管理点監視方式
hazard analysis and critical control point system いわゆる HACCP である.HACCP 方式の導入はアメリカや
EU で積極的に進められており,食品が国際化の時代においては日本も積極的に導入する必要があろう.
食品衛生法の改正・施行を機会に,本書の刊行を企画した次第であり,食品衛生という広汎な内容に関して,平易にしかも最新の情報も取り入れるようにした.食品に関わる教科をもつ大学,短大,栄養調理を中心とする専門学校などでは食品衛生学を履修科目としてとりあげている.本書はこのような学生の教科書,参考書として書かれたものであるが,学生のみならず,一般消費者あるいは食品工業などに携わる方々にも役立つものと考えている.
最後に,本書の内容,構成についてはかなり入念に検討したつもりであるが,未だ不十分な点があるかもしれず,ご指摘,ご教示をたまわれば幸いである.
平成 11 年 5 月
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