本書は,1990 年から 1997 年までイギリスのリーズ大学で教育学修士・博士の学位を取るために行った研究の集大成です.MA
論文・PhD 論文とも全体を発表することなく過ぎ去るところでしたが,今般新睦人先生のご尽力により,両論文の主要な研究部分の翻訳を出版できることとなりました.両論文の部分的翻訳に加えて,新しく障害者運動の項を加えました.障害者のエンパワーメントについての考察を試みることがその目的です.
前半部分は,1994 年・95 年に調査をした研究に基づいているので,日進月歩の今日,その後制度的変更が行われたり,日程に上ったりしているものも存在します.統計においても幾分の変更はありますが,論文の構成上大幅な書き換えは不可能なため,新しい資料に基づく修正は,内容が大きく変更しない場合にのみ行いました.
論文の構成は,最初に本研究の目的と研究方法をまとめ,次に 4ヶ国の教育・障害者福祉に関わる概略をを報告し,ケーススタディに基づく分析を試みています.分析で明かにした
4ヶ国の共通性・相違性を背景に,障害者政策を実現した大きな力である障害者運動のケーススタディを行い,障害者運動が国家政策や障害者理解に果たした役割を考察し,障害者のエンパワーメント理論の構築に貢献することを目指しています.
資料については,イギリス・アメリカ・スウェーデンの国の機関や,学校,訓練施設,障害者団体及び個人等を訪問し,資料を集めると同時にインタビューを行い,証拠のトライアンギュレーションを意図しました.また,言葉の問題では,誤解を避けるための確認アンケートを行い,正しい理解に到達するために努力しました.
テーマに迫るには,教育・労働・福祉・障害者運動と非常に幅広い分野を視野に入れる必要があったため,膨大な資料の整理が不可避となり,指導・助言を得ることがなかなか難しく,今回の出版を機に,ご意見・ご批判をいただけたらありがたく存じます.
2000 年 9 月
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