田園の魚をとりもどせ!

田園の魚をとりもどせ!

絶滅寸前の魚の復元例、生息調査法を紹介

著者 高橋 清孝 編著
ジャンル 海洋学・環境科学 > 環境
出版年月日 2009/01/30
ISBN 9784769910947
判型・ページ数 B5・148ページ
定価 本体2,900円+税
在庫 在庫あり

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日本の原風景、田んぼに魚と子供達がいなくなった!
それは、土地の開発、強力な農薬、ほ場整備、外来魚・移植魚の侵入などで淡水魚の産卵場と生育場の多くが奪われてしまったことが原因だ。
失われた田園の自然を元に戻し、既に絶滅寸前の貴重な生きものの生活史や、絶滅寸前の魚たちを取り戻そうと立ち上がる全国各地の市民団体の活動や成功事例やをわかりやすいイラストで紹介。
また魚の通り道魚道を水田や川につける方法や説明、魚の生息調査方法も詳しく解説。
日本固有の多くの生きものを次の世代に受け継ぐにはどうしたらいいのか、どうしたらまわりの水田を生き物の豊かな水田に戻せるのか考えてみませんか?


はじめに

 童謡「どんぐりころころ」の「どじょう」,「故郷(ふるさと)」の「こぶな」,「めだかの学校」の「めだか」に見られるように,田んぼの魚と子供たちが戯れるシーンは農村の原風景そのものである.魚が育つためには,水と餌が必要であり,繁殖のためには産卵・ふ化して稚魚が安全に育つことができる産卵場と成育場が不可欠である.特に田園の魚たちの繁殖方法は多様であり,そこには子孫を残すための目を見張るような工夫がそれぞれに施されている.彼らは水田が拓かれるよりかなり以前に,多様な生息環境を備えた湿地帯にすみついて,それぞれが繁栄するために独自の進化を成し遂げた.数千年前から始まった開田工事で湿地帯の大部分が水田に化すと,したたかな魚たちは水田を産卵場と稚魚の成育場として利用することにより繁殖を続け,これまで隆盛を保ち続けてきた.

 しかし,近年,種々の開発,強力な農薬の使用,ほ場整備,外来魚・移植魚の侵入により,これら淡水魚の産卵場と生育場の多くが奪われてしまった.このため,この半世紀で生息数は極度に減少し,メダカすら希少となって,2007年,環境省は約半数の汽水魚・淡水魚に絶滅の恐れがあるとするレッドリスト改定版を発表した.減少は魚にとどまらず,貝類,鳥類,両生類などで同時に進行し,今や田園の生態系はその全体が崩壊の危機に瀕していると言って過言ではない.

 その後,魚毒性の強い農薬は消費者の健康被害を考慮して改良され魚類へい死は減少したが,ホタルの消滅に見られるように根本解決には至っていない.また,他の減少要因はほとんど放置されたため,魚は大部分の田んぼから姿を消し,地域によってはすでに絶滅したと考えられる魚種が増加している.中でも,多くのタナゴ類,ヒナモロコ類,モツゴ類,アユモドキなどは限られた地域のため池や水路にしか生息が確認されないことから,特に絶滅が危惧されている.

 魚のすめない田んぼの米は,安全と言えるのか?
全国の消費者は米に対し不安を感じている.田んぼとその周辺で繁殖するさまざまな小動物の存在は,農薬を含め深刻な化学汚染がないことを簡単に証明できる.生きもののすめない田んぼでは,不安になるのは当然である.

 これまで多くの研究者や市民・農業団体が田園自然再生の必要性を主張し,さまざまな活動を展開してきた.最近,事の重大さを認識した国は,環境に配慮した農業の推進を提唱し,そのための事業に着手した.これらを受けて,農業者は各地で安全な食品を生産し続けるために健全な田んぼやため池・水路を取り戻す取り組みを拡大しつつある.

 2004年以来,シナイモツゴ郷の会は全国の市民団体や研究者に呼びかけて,水辺の自然再生に関するシンポジウムや情報交換会を毎年,開催してきた.地方開催にもかかわらず,全国から多くの方々に参加いただき,毎回,先進的な基調講演の内容を中心にして活発な議論が交わされてきた.その後,参加者から出版の要望が多く寄せられ,当会が企画してとりまとめることになった.まず,2006年に外来魚対策のため「ブラックバスを退治する-シナイモツゴ郷の会からのメッセージ-」を恒星社厚生閣から出版した.

 2冊目の本書では,2006年以降のシンポジウムで議論になった「田園の自然をどのように守り再生し共存するのか?」という大きな課題と取り組むことになった.自然再生と取り組んでいる研究者,市民団体指導者そして農業技術者にお願いし,次の課題について語ってもらった.「田園でなぜ魚は減少したのか?」「減少著しい魚をどのように保全するのか?」「失われた魚たちの繁殖場をどのように再生するのか?」「切り捨てられつつある全国20万個のため池をどのように保全するのか?」「ブラックバスなど外来動物の被害からどのように在来魚を守るのか?」「市民・農民団体の自然再生活動をどのようにして継続するのか?」

 彼らは,田園の魚たちの生態を慎重に観察し,自らの経験に基づいてさまざまな保全策を具体的に提言した.さらに,現場の取り組みに役立てるための手法を詳述し,また,理解しやすくするためイラストを多用することに惜しみなく多くの時間を割いた.彼らが語る新知見や新技術の多くは,崩壊寸前に陥った田園の自然を再生する上で欠くべからざるものである.

 本書が自然再生活動を担う方々や魚の生態と湿地の自然に関心のある方々に一人でも多く読んでいただければ幸いである.

はじめに(高橋清孝)
1章 田園の魚たち(高橋清孝・岡部夏雄)

2章 田園の現状と課題
2-1 ほ場整備事業がもたらす水田生態系の危機(細谷和海)
1.水田の由来
2.水田の生態学的役割
3.水路の生態学的役割
4.ため池の生態学的役割
5.水田生態系の危機
6.生きものから農政を考える

2-2 外来魚の被害と対策(小林 光)
1.田園地帯における外来生物の影響
2.ブラックバスの全国的蔓延
3.国による外来生物対策のはじまり
4.規制される外来魚
5.環境省によるブラックバスなど防除に関する取り組み
6.水産庁によるブラックバスなど防除に関する取り組み
7.水土里ネットによるブラックバスなど防除活動
8.市民によるブラックバスなど防除活動
9.ノーバスネットについて

2-3 自然再生活動への支援施策(森田明宏・澤田真之)
1.自然再生活動への支援施策
2.自然再生活動の今後の展開について

3章 田園在来魚の復元
3-1 シナイモツゴ~自然再生モデルとしての復元~(高橋清孝)
1.シナイモツゴ
2.拡がるブラックバスの脅威
3.ブラックバス退治開始
4.だれでもできるブラックバス退治方法の開発
5.だれでもできるシナイモツゴ繁殖技術の開発
6.消費者の支援による活動継続
7.だれでもできる自然再生技術と体制づくり

3-2 ゼニタナゴ~生息場探索と保全~
  (藤本泰文・北島淳也・倉石 信・
   稲葉 修・進東健太郎・高橋清孝)
1.ゼニタナゴ
2.広範囲にわたる調査活動
3.生息地の状況
4.保全のためのシステム
5.地域住民によって守られるゼニタナゴ

3-3 ニッポンバラタナゴ~池干し~
  (木村諭史・松葉成生・辻井悠希・山野ひとみ・加納義彦)
1.ニッポンバラタナゴ
2.ドビ流し
3.太陽電池を用いた水浄化循環システム
4.池干し
5.今後の展望

3-4 ウシモツゴ~官民協働による保全~(大原健一)
1.ウシモツゴ
2.保全への取り組み状況
3.成果と今後の課題

3-5 在来魚~伊豆沼方式による復元~(進東健太郎)
1.はじめに
2.伊豆沼・内沼における状況
3.伊豆沼・内沼ゼニタナゴ復元プロジェクトとバス・バスターズの活動
4.駆除活動の成果と今後の課題

3-6 水鳥~伊豆沼・内沼におけるバス駆除開始後の復元過程~  (嶋田哲郎・植田健稔)
1.調査地と調査方法
2.カンムリカイツブリ,ダイサギ,カワアイサの増加
3.オオクチバス以外の影響

4章 水田と水路の保全による在来魚の復元
4-1 水田と河川・水路の実態(高橋清孝)
1.河川
2.水路

4-2 アユモドキ~休耕田を利用して~(青 雅一・阿部 司)
1.アユモドキ
2.岡山市内のアユモドキ生息地(旭川水系)における保全活動
3.岡山市瀬戸町(吉井川水系)におけるアユモドキの
  保全活動と生態調査

4-3 コウノトリ~共生をめざして~
1.豊岡市の取り組み(宮垣 均)
2.農協関係者の取り組み(田和 豊)

4-4 ヒナモロコ~里親制度と水路の保全で救う~(大石 敏)
1.ヒナモロコ
2.探索から活動まで
3.保全への取り組み
4.成果と今後の課題

4-5 メダカ~農業水路の保全で復元~(坂本 啓・谷合祐一・須藤篤史・小畑千賀志・花輪正一・太田裕達・高橋清孝)
1.メダカ
2.成果と今後の課題

4-6 サクラマス~赤川の再生とともに~(岡部夏雄)
1.サクラマス
2.遡上再開への取り組み
3.今後の展望

5章 水田・農業水路ネットワークの復元
5-1 ネットワーク復元の目的(鈴木正貴・水谷正一)
1.魚にとっての流水域と止水域
2.産卵場としての水田
3.水田・水路・河川をつなぐ意味
4.水域ネットワーク復元の意義

5-2 小規模魚道の利用(鈴木正貴・水谷正一)
1.小規模魚道とは
2.小規模魚道の基本構造
3.既製品を利用した小規模魚道
4.小規模魚道の設置前との作業

5-3 水田魚道によるネットワーク復元の事例
  (鈴木正貴・三塚牧夫・中茎元一・水谷正一)
1.河川と排水路とをつなぐ魚道
2.水路内の落差を解消する魚道
3.水路合流点の落差を解消する魚道
4.水田と排水路とを直結する魚道

6章 だれでもできる魚の調査方法
  (久保田龍二・坂本 啓・高橋清孝)
1.生息調査手法
2.定量的調査方法
あとがき(高橋清孝)

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