“不機嫌な”太陽

気候変動のもうひとつのシナリオ

“不機嫌な”太陽

太陽と宇宙が支配する気候変動

著者 H.スベンスマルク
N.コールダー
桜井 邦朋
青山 洋
ジャンル 天文学 > 天文物理学・宇宙物理学
出版年月日 2010/03/10
ISBN 9784769912132
判型・ページ数 A5・256ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり

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太陽活動低下等により地球大気中へ宇宙線の侵入量が増加し下層雲を形成。その結果、地球が寒冷化するという新しい学説(スベンスマルク効果)を、主観や感情を交えず平易な言葉で語る。この太陽と宇宙が支配する「もうひとつのシナリオ」が、喫緊の問題として取り上げられている気候変動の未来予想に一石を投じる。海外で話題となった著作の邦訳本。


はじめに

 地球の太古の気候を記録した化石を,地質学と地球物理学の両面から過去50年間にわたって研究することにより,我々のこの古い惑星「地球」は,その誕生から現在に至る長い間に,極端に大きな気候変動を繰り返し経験していることが確証された.すなわち,気候は,両極地から赤道に至るまで全てが凍結した全球凍結(Snowball Earth)状態と,両極地まで全体に暖かさが広がった長期の温暖状態との間で変動したのである.これらの繰り返し起こっている気候状態には,様々な環境―例えば,・漂流する大陸の位置とそれに伴う海流,・進化する大気の組成,・徐々に進化する太陽の明るさ,・地球の公転軌道の離心率と自転軸の歳差運動との組み合わせ―の変化が,影響を及ぼしている.また,太陽活動が活発な時でも,増光は,ほんの1/1,000程度でしかないこと,それに,現代の温暖な気候には,太陽のある種の磁気活動が大きく影響を及ぼしていることも立証されていた.
 それにもかかわらず,これらの影響は科学的な理解には至っていない.過去の各条件について判明していることは,非常に少なく,特定の気候変動要因(driver)も同定されていない.また,温暖な気候と寒冷な気候の間で穏やかに振れた最近の数世紀間の気候変動は,太陽の磁気活動の変動を伴っており,太陽の僅かな増光で説明できるよりも,ずっと大きい.
 この行き詰まり状態にあって,我々に幸運なことに,数年前にヘンリク・スベンスマルク(Henrik Svensmark)は,惑星である地球の温度を左右するのに,地球を覆う雲が重要な役割を担っていると考えたのである.雲は,入射してくる太陽光線に対して,高い反射特性を有するからである.また,スベンスマルクは,雲を構成している個々の小さな水滴は,宇宙線粒子の通過によりイオンが発生した所に,最も多く形成されると考え,雲の形成量を,変化する宇宙線強度に結び付けたのである.言い換えると,地球の加熱を調節する巨大な「雲のバルブ」を,宇宙線が制御していると考えたのである.この宇宙線の影響を定量化するためには,膨大な仕事が必要であり,しかも,その仕事は,現在の地球温暖化の観点から,かなり緊急を要するものである.
 この緊急性から,彼の研究は,当然,即座に容認されて支持されるものと期待されたが,奇妙なことに,そうはならなかったのである.というのは,地球の温暖化が,政府機関と科学界の双方ですでに政治課題となっていたからである.また,科学的な路線が,「著名な」科学者によってすでに描かれており,この重要かつ新規なアイデアは,邪魔な闖入者なのである.
 こういったことは,稀な現象ではない.私も若い頃のことを思い出す.当時私は,100万Kのコロナが膨張して,超音速の太陽風を形成していることを示した.そして,彗星の尾を太陽とは反対側に向かわせたり,また,宇宙線を変動させたりする太陽の粒子線放射を,この太陽風で説明したのである.この流体力学に基づいた太陽風は,当時,有難くないアイデアであったので,その論文は,2人の高名な審査員により丁重な断り状で拒否された.もっとも,それを編集長が覆したために,著名な科学誌に辛うじて掲載されたが.
 スベンスマルクは,彼の科学的創造性のために,手厳しい処遇を受け,十分な研究費も保証されない立場に追いやられた.彼には同様の処遇を受けた仲間がいる.思い起こすと,ジャック・エディ(Jack Eddy)は,ウォルター・マウンダー(Walter Maunder)の初期の研究を追認し,それに新しい解釈を加えたことで,その職を失っている.ウォルター・マウンダーは,1645~1715年までの長期間を通して,太陽の黒点が著しく少なかったことを指摘した人である.エディは,このマウンダー極小期には,地球の気候が寒冷であったので,それにより,気候を太陽の磁気活動に直接結び付けられるという,重要な点を初めて強調したのである.
 スベンスマルクは,宇宙線と雲との関係を追究するための研究資金の調達が,常に困難であったが,怠けていたわけではない.彼は,コペンハーゲンの研究所で,比較的単純で手ごろな実験に没頭し,雲の形成には空気中のイオンが不可欠の役割を果たしていることを明確に示したのである.今日では,実物大の実験装置が,ジュネーブのCERNに建設されており,宇宙線を模擬するために,加速器からの高速粒子を用いた実験が開始されようとしている.
 幸運にも,スベンスマルクは,コペンハーゲンでの実験で確実な結果が得られるとすぐに,この気候変動全体の機構とその歴史を説明するために,サイエンスライターのナイジェル・コールダー(Niegel Calder)と力を合わせて,平易な言葉で本書を著したのである.宇宙線,雲,および気候に関するスベンスマルクの理論は,広範囲の科学にまたがっているので,この読みやすい入門書は,一般読者だけでなく各種分野の専門家にとっても,同様に役立つであろう.

まえがき(ユージン・パーカー)
0章 概 説
1章 不活発な太陽は氷山多発期を生む
 1節 万年氷の下の遺物が物語る過去の気候変動
 2節 小氷期における太陽黒点の消失
 3節 太陽風の送風機の調子と気候変動
 4節 氷山多発期
 5節 躁うつ病の太陽
 6節 氷期における気候の良い時と悪い時
 7節 雲形成仮説を否定するベーアのデータ

2章 宇宙線の冒険
 1節 宇宙線の概要
 2節 宇宙線の発生源のつきとめ
 3節 星の燃えかすから出るもの
 4節 宇宙線はあってもなくても良いものではない
 5節 母なる太陽はいかにして我々を守るのか
 6節 最後の2つの防衛線
 7節 “あれを注文したのは誰だ”
 8節 直感の裏付け
 9節 ラシャンプ磁極周回期への再移行

3章 光輝く地球は冷えている
 1節 分かっていなかった雲
 2節 雲による熱の出入りの抑制
 3節 太陽と気候との間の見落とされていたつながり
 4節 幼稚で無責任な提案
 5節 低い雲に驚くほどの一致
 6節 太陽活動が活発化した時
 7節 南極だけは雲で温暖化する
 8節 ペンギンは南極の寒冷化を知っていた
 9節 もっと単純に構えよ
 10節 炭酸ガスにはクールに対応しよう

4章 雲の形成を呼びこむ原因は何か
 1節 霧や雲の過去の形成実験
 2節 海鳥の朝食の臭い
 3節 雲凝縮核の補給の必要性
 4節 パナマ沖の低空での超微細粒子群の大量形成
 5節 CERNでのカークビーの実験計画
 6節 空気箱の地下室への設置
 7節 瞬間に起こった極微細粒子の生成
 8節 雲を作る種(シード)の種は電子である

5章 恐竜が天の川銀河を案内する
 1節 押し曲げられた石灰層
 2節 鉄隕石に託された伝言
 3節 各腕との遭遇による気候と生物の変化
 4節 小さい恐竜を寒冷気候から守る羽根
 5節 炭酸ガスについての議論
 6節 天体望遠鏡の役割を果たす貝殻

6章 スターバースト,熱帯の氷,生命が変化するという幸運
 1節 全球凍結
 2節 星のベビーブーム
 3節 若い太陽は暗かったのに温暖だった矛盾
 4節 炭素原子が示す生物生産性の拡大期と縮小期
 5節 生物の変動性と宇宙線強度

7章 人間は超新星の子供か
 1節 概 説
 2節 アフリカのサヘルが埃っぽくなった時
 3節 石包丁と新しいあごの筋肉
 4節 ハエ取り紙に捕えられた超新星の原子
 5節 宇宙線による冬
 6節 ミュンヘンの超新星の候補
 7節 超新星の残骸の探査
 8節 新しい知識の連鎖

8章 宇宙気候学のための行動計画
 1節 宇宙線による気候変動の説明
 2節 雲の分子機構の研究(CLOUD)
 3節 この天の川銀河をもっと良く知るために
 4節 不可解なリズムで揺れる惑星
 5節 地球の過去の気候をもっと良く知るために
 6節 荒れ狂う宇宙における生物
 7節 太陽活動の盛衰を読み取る
 8節 今日の気候変動についての建設的な見解

9章 2008年における追記 ― 炭酸ガスの温室効果は微弱である
 1節 新しい実験と局所泡への取り組み
 2節 天の川銀河における宇宙線分布図の作成
 3節 “以前とは全く異なる手合わせをしている”
 4節 破綻した炭酸ガス原因説
 5節 小氷期の再来は御免だ

解 題
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