現代コミュニティとは何か

「現代コミュニティの社会学」入門

現代コミュニティとは何か

新たなコミュニティ論の構築と展開を提示

著者 船津 衛
浅川 達人
ジャンル 社会学 > 社会学理論
出版年月日 2014/06/25
ISBN 9784769914730
判型・ページ数 4-6・232ページ
定価 本体2,300円+税
在庫 在庫あり

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現代コミュニティのゆくえは? コミュニティは一方では衰退・崩壊が囁かれ、他方では復活や再生がクローズアップされている。本書は現代コミュニティの様相について、その現実と変化の状況を具体的に解明し、これからの方向性について積極的な問題提起を行い、新しいコミュニティ論の構築を目指した。各章末にQ&Aとブック・ガイドを掲載しコンパクトにまとめた現代コミュニティ社会学の入門書。


はじめに

こんにち、社会の大きな変化に伴い、コミュニティのあり方にもさまざまな変化が生じてきている。そして、一方では、コミュニティの衰退や崩壊がいわれ、他方では、コミュニティの復活や再生がクローズアップされている。また、日常生活においては何の役にも立たないから不要であるといわれる半面、地域の防災や防犯、育児や介護に関して、いまこそコミュニティが必要であるという主張が多くなされている。さらには、情報コミュニティの出現によって、若者をはじめ多くの人々が新しいコミュニティづくりにきわめて熱心となっている。
 本書は、このような現代のコミュニティの様相について、コミュニティの社会構造、社会関係、都市的相互作用、住民組織、コミュニティ・イメージ、コミュニティ意識、コミュニティ文化、コミュニティ・メディア、コミュニティ・コミュニケーション、情報コミュニティ、そして、コミュニティの変容やコミュニティの未来などの側面から、その現実と変化の状況を具体的に解明し、そこから、コミュニティはどうあるべきかを問題としている。
 第一章は、コミュニティの概念について、これまでの研究者の見解を検討しながら、現代コミュニティとは何かについて論じている。第二章は、コミュニティの変容について、その衰退と再生の様相を具体的に明らかにし、現在の状況と今後のあり方が検討されている。第三章は、二一世紀のコミュニティのイメージと現実とのギャップを指摘し、これからのコミュニティのゆくえが考察されている。
 第四章は、大都市コミュニティの社会構造について、全体社会の変化と都市社会のあり方を「社会地図」を用いて具体的に明らかにしている。第五章では、職業階層の空間分布について、東京とシカゴの都市間の比較研究から解明されている。第六章は、都市における人々の社会関係について、これまでの仮説を検討し、東京での社会関係の現在・過去・未来が問題とされている。
 第七章は、地方都市におけるコミュニティの社会構造について、まちづくりを担う人々によるコミュニティの再生が具体的に解明されている。第八章は、都市に住む人々の相互作用である「都市的相互作用」が取り上げられ、その典型である「ストレンジャー・インターラクション」の特質について考察がなされている。第九章は、コミュニティの住民組織に関して、日本の町内会とイタリアのコントラーダのそれぞれの活動が具体的に明らかにされている。
 第十章は、コミュニティのあり方を左右するコミュニティ・イメージが問題とされ、「住みよいコミュニティ」について論じられている。第十一章は、コミュニティへの関心・関与を意味するコミュニティ意識の具体的様相とその分析枠組みが検討されている。第十二章は、都市の祭りに代表される非日常的なコミュニティ文化とともに、芸術文化、生活文化、余暇文化などの日常的コミュニティ文化について言及されている。
 第十三章は、身近な情報や地域の情報を提供するコミュニティ・メディアを問題とし、とりわけ、CATVとコミュニティFM放送の特質とその果たす役割について論じられている。第十四章は、コミュニティ・コミュニケーションについて、日常的コミュニケーション、「うわさ」のコミュニケーション、災害時のコミュニケーションが具体的に考察されている。第十五章は、「地図にないコミュニティ」といわれる情報コミュニティの現状と、それが地域コミュニティとどのように関連するのかについて考察がなされている。
 本書は、もともとは放送大学のテレビ科目「現代コミュニティ論」(二〇〇六

〇九年度)のテキスト『現代コミュニティ論』(放送大学教育振興会、二〇〇六)として作成されたものである。受講生の中に、コミュニティ活動に従事している人、また、これから携わろうとしている人、あるいは、情報コミュニティに強い関心をもつ人が多くおられ、これらの方々からさまざまな感想や意見が寄せられた。そこで、その声に応えるべく、今回、恒星社厚生閣のご厚意により、タイトルも新たに『現代コミュニティとは何か―「現代コミュニティの社会学」入門』とし、各章とも書き加え、内容もかなり改訂して、出版させていただくことになった。
 本書は、現代コミュニティのあり方に関して、社会学の観点から具体的現実の解明を目指し、新たな事実を浮き彫りにし、これからの方向について積極的な問題提起を行うとともに、新しいコミュニティ論を展開することを意図している。本書によって、多くの方々がコミュニティへの関心を深め、コミュニティの将来と自己の将来とを結びつけて考えることができるようになればと願っている。

第一章「現代コミュニティ」とは何か
  一 集団のタイプ分け/二 「コミュニティ」の概念/三 「情報コミュニティ」と「地域コミュニティ」
第二章 「コミュニティ」の衰退と再生 ― 「コミュニティ」の変容
  一 土着から流動へ、そして定住に/ 二 「コミュニティ」の変容/三 下町の社会と文化/四 下町の再生
第三章 「コミュニティ」の未来は―二一世紀の「コミュニティ」
 一 未来の「コミュニティ」/二 二一世紀の「コミュニティ」の現実/三 二一世紀の「コミュニティ」のゆくえ/
第四章 社会と空間の変化を読み解く―大都市コミュニティの社会構造①
  一 社会変動と都市社会の再編/二 産業型社会への変化と都市社会の再編/三 脱工業型社会への変化と都市社会の再編/四 社会と空間の変容
第五章 比較都市研究をめざして ― 大都市コミュニティの社会構造②
  一 職業階層の空間分布/二 製造業の空間分布/三 都市間比較の試み
第六章 都市社会の人間関係―コミュニティの社会関係①
  一 都会人の人間関係 二 東京の地域社会で展開してきた社会関係/三 社会関係の現在・過去・未来
第七章 まちづくりを担う人々 ― コミュニティの社会関係②
  一 中心市街地の衰退/二 長浜市のまちづくり/三 まちづくりの担い手/四 人が集まり、人が交わる
第八章 「ストレンジャー・インターラクション」―「都市的相互作用」
  一 都市の特質/二 「都市疎外」テーゼから「社会的統合」テーゼへ/三 「ストレンジャー・インターラクション」
第九章 コミュニティ活動の担い手 ― 住民組織
  一 町内会の成立と機能/二 イタリアの都市(シエナ)の住民組織/三 町内会とコントラーダ
第十章 「住みよいコミュニティ」―「コミュニティ・イメージ」
  一 「コミュニティ・シンボル」/二 「都市のイメージ」の研究/三 「住みよいコミュニティ」のイメージ
第十一章 「コミュニティ」への関心・関与―「コミュニティ意識」
  一 「コミュニティ意識」とは/二 「コミュニティ意識」の形成と展開/三 「コミュニティ意識」の分析枠組み
第十二章 「都市の祭り」の復活 ― 「コミュニティ文化」
  一 「都市の祭り」/二 「コミュニティ文化」/三 「コミュニティ文化」の問題点/四 これからの「コミュニティ文化」のあり方
第十三章 身近な情報・地域の情報の提供―「コミュニティ・メディア」
  一 「コミュニティ・メディア」と「コミュニティ情報」/二 災害情報メディアとしての「コミュニティ・メディア」/三 「コミュニティ・メディア」への「住民参加」
第十四章 「うわさ」も必要なコミュニケーション―「コミュニティ・コミュニケーション」
一 「コミュニティ・コミュニケーション」の特質 /二 「うわさ」のコミュニケーション/三 災害情報のコミュニケーション/
第十五章 「地図にないコミュニティ」―「情報コミュニティ」
一 高度情報社会の展開/二 電子コミュニケーション/三 「情報コミュニティ」/四 「情報コミュニティ」と「地域コミュニティ」/五 「情報コミュニティ」のゆくえ

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