詳論 沿岸海洋学

沿岸海洋研究会50周年記念

詳論 沿岸海洋学

沿岸海洋で扱う特徴的題材を集め詳しく解説

著者 日本海洋学会沿岸海洋研究会
ジャンル 海洋学・環境科学 > 海洋
出版年月日 2014/02/05
ISBN 9784769914679
判型・ページ数 B5・272ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり

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日本海洋学会の下部組織、沿岸海洋研究会の設立50周年を記念し、物理・化学・生物と様々な分野が複雑に絡む沿岸海洋に特徴的なテーマを取り上げ、それぞれの視点で解説する。最先端のテーマを扱うことで、分野間の相互理解や十分に情報提供がなされていない現象への疑問の整理を行い、沿岸海洋学のさらなる発展を企図した。


はじめに

 本書は,日本海洋学会の下部組織である沿岸海洋研究会の設立50周年を記念して刊行されたものである。本研究会が設立(当時は沿岸海洋研究部会)された1962年は,埋立等による沿岸域の地形改変や産業排水・都市排水による環境負荷が著しく増大したわが国の高度経済成長期さなかにあたる。さらにこの時期には,伊勢湾台風(1959)や第2室戸台風(1961)による高潮・高波,チリ地震津波(1960)などの沿岸海洋に関わる甚大な災害が頻発していた。これらの様々な問題に対処するために沿岸海洋に関する知識と理解を深めることを目指し,沿岸海洋に関わるわが国の研究者や技術者の協力・情報交換の場として設立されたのが沿岸海洋研究会である.
 設立以来の本研究会の活動には二つの中心がある.一つは,春と秋の日本海洋学会の定期大会時における沿岸海洋シンポジウムの開催である.このシンポジウムでは,開催時における研究の動向や開催地の地域性を踏まえたテーマについての話題提供と討論が行われている.もう一つの活動の中心は,機関誌「沿岸海洋研究」の年2回の刊行である.同誌では,沿岸海洋シンポジウムでの話題が論文として採録されるとともに,会員からの投稿による原著論文,短報,寄稿や研究会の企画による総説などが掲載されている.このシンポジウム論文や総説は,特定のテーマについての最新の知識をまとめた資料として大いに役立っている.本研究会は,これらの活動を通じてわが国沿岸海洋学の発展を牽引してきたのである.
 さて,本研究会の50周年を記念して刊行された本書は,沿岸海洋学のさらなる発展への貢献を企図したものであるが,高校生や大学の初年次生を対象とした啓蒙書・入門書ではなく,ある程度海洋学の基礎を修め,沿岸海洋学のより深い理解を目指す人向けの専門書である.ただし,専門書といっても沿岸海洋学の体系的な教科書というわけではない.沿岸海洋学を「沿岸」の「海洋学」と考えれば,それはあたかも海洋学の一部のようであるが,実際には必ずしもそうではないので,基礎的な海洋学の体系を修めても実際に沿岸海洋の研究に取り組んでみると戸惑いを覚えることも多い.そこで本書では,沿岸海洋に特徴的なテーマを取り上げ,それぞれについて研究実績をあげてきた人達に,自らの経験から得た「勘どころ」や教科書にはあまり書かれていないような知識を語ってもらうこととした.したがって,本書の構成は十分に体系的なものではなく,また個別にはかなり深く専門に踏み込んだものもある.このため本書は,全体を通読して理解するというよりは,沿岸海洋の研究の様々な局面で,関連するテーマについて理解を深めるために用いられることになるであろう.本書の試みが成功し,沿岸海洋学の発展に貢献することができれば誠に幸いである.(後略)

序/企画意図と構成/第1章 沿岸海洋の地形地理学的特性/第2章 沿岸域の潮汐・潮流の精確な理解のために/第3章 沿岸海洋の風に対する応答と循環/第4章 沿岸における内部波と密度流/第5章 沿岸域の成層構造と鉛直混合/第6章 沿岸域における流れの不安定と水平混合・輸送/第7章 海水交換と物質輸送の時間スケール/第8章 亜寒帯沿岸域の春期ブルームの発生,栄養塩動態とその生態学的意義/第9章 海底に棲む基礎生産者:底生微細藻類/第10章 貧酸素水塊の形成と挙動/第11章 沿岸堆積物における酸素の動態/第12章 動物プランクトンの物質循環に果たす役割/第13章 微生物の多様性と沿岸生態系の生物生産に果たす役割/第14章 海洋生態系とモデリング/第15章 世界の沿岸海域の共通の話題と多様性

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