新刊

哲学音楽論

音楽教育とサウンドスケープ

哲学音楽論

音、言葉、身体をめぐり音楽と教育を問う。

著者 今田 匡彦
ジャンル 社会学 > 福祉・教育
出版年月日 2015/04/15
ISBN 9784769914938
判型・ページ数 A5・176ページ
定価 本体2,700円+税
在庫 在庫あり

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音楽とは何か、ヒトはそれを言葉で解釈し意味づけた。しかし、言葉がなくても音は存在し、ヒトの誕生よりはるか以前から音そのものは鳴り響く。著者は教育現場を通じ、言葉をあてがえない音環境(サウンドスケープ)に身を置き、自らの耳と身体で<聴く>ことを試みる。この音への立ち合い方を通じ今後の音楽教育を考える。


はじめに

「序」より抜粋
 『哲学音楽論』を進めていくにあたり、いくつかのキーワードがある。
 まず、今述べた〈音楽教育〉である。われわれが生まれ落ちたそのとき、もうすでに多くの「音楽」が、さまざまな接頭語(たとえば〈ポピュラー〉、〈クラシック〉、〈民族〉、〈伝統〉、〈ロック〉、〈環境〉など)を伴って存在する。ゆえに多くの人は、なにが音楽なのか、音楽とはなんなのか、思考する必要がない。クラシック音楽家は〈西洋音楽の普遍性〉を当然のこととして受けとめる(あまりにも当然なので〈普遍性〉ということばを知る必要もない)。
 逆に学校現場では、音楽科の存在意義が常に問題となる。音楽教師たちは教科に対するアカウンタビリィティ(説明責任)を、他教科以上に要求される。子どもたちは、学校で 音楽の授業を受けなくても、好きな音楽を視聴し、カラオケで歌うことができるのだから。音楽を思考せず聴くことは、今、まさに生起している実際なので、その理由を歴史的、社 会的、文化的背景に求めても、おそらくもうひとつの紙の世界を構築して終わることになる。
 それならば、音楽がことばにより解釈される以前の原初、つまり、音楽とことばが生まれた軌跡を探れば良いだけのことだ。ここで第2のキーワード〈サウンドスケープ〉が必要となる。昔の人々がどのようにサウンドスケープを見立て、さまざまな〈音楽文化〉を形成したのか、を探るのではなく、自らの耳と身体で音を聴き、見立てていく。そのような体験の連なりの、どこか一つのポイントに、ふっと打たれる瞬間があるかもしれない。
 (略)
 もちろん〈ことば〉も重要なキーワードとなる。ことばはいつも後づけの解釈や、意味による価値づけをしているわけではないからだ。ことばの存在が無ければ〈哲学音楽〉は 成立しない。

 ヒトは、風からさまざまな音楽を習った。ギリシア神話の牧神パンは羊飼いに、葦笛に蜜蝋を塗る手段を教えた(Schafer, 2006)。口笛もまた、ヒトが風に木霊を返すことでで きた楽器だ。海で吹きすさぶ西風は波を生み、やがて波は凪ぐ。ヒトが真似してみたくなっても仕方ない。
 今日も、どこかでビル風が吹いている。
 風の音を聴く。〈聴く〉という行為は、視覚化こそされないが、〈食べる〉や〈歌う〉や〈笑う〉などと同じか、それ以上に積極的な動詞である。ただ、誰かがビル風に口笛で木 霊を返したとしても、別段、そこに意味や価値を見出す必要もないのだろう。
 身体がなにかを感じ、そのインパクトを透明に写し取る。音楽、ことば、身体をめぐる幸福な営みを、僅かばかりでも提案できれば、と考える。


第1章 オンガクそのもの,思考そのもの
1 音楽と哲学/2 a priori(ア・プリオリ)/3 connotation(第二義的言語)/4 サウンドスケープとサウンド・エデュケーション/5 <それ>/6 うたについて
第2章 ことばと音楽:反哲学へ
1 最初のことば:存在と認識の始まり/2 音楽という方向性/3 スーザン・ソンタグとロラン・バルト:ことばと音楽の問題/4 ロバート・ウォーカーのポジション/5 「日本」の可能性/6 音楽を教えることば:能楽師との対話(日本音楽教育学会第41回大会プロジェクト研究から)
第3章 「音楽」の外側
1 ことばからみた「音楽」/2 紅茶と鳩サブレー/3 理念、あるいは目標/4 メソッド/5 音楽教育とポストコロニアル
第4章 最初のオンガク:サウンドスケープとサウンド・プロジェクト
1 音環境と騒音/2 音楽教育/3 紙/4 声/5 動く身体/6 子どもたちとの対話:サウンド・プロジェクトにみるinside & outside(実践記録)  
第5章 音楽が亡びるとき:このローファイの時代に
1 サウンドスケープと社会学/2 大工とラジオの話/3 模倣-2つのミメーシス/4 サウンドスケープと音楽/5 小学校の音楽室で/6 Final Thoughts

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