物理学史断章

現代物理学への十二の小径

物理学史断章

人は自然現象の不思議をどう解明してきたか

著者 西條 敏美
ジャンル 科学一般 > 科学史
出版年月日 2001/07/10
ISBN 9784769909453
判型・ページ数 A5・190ページ
定価 本体2,800円+税
在庫 在庫あり

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著者が教鞭をとる中,疑問に感じたこと,はっきりさせたいことを纏めた珠玉のノート。空はなぜ青いか,音の伝わる速度をどのようにして計測したか,光の回折現象をいかに解明してきたか,など先人が自然の不思議。神秘性に挑戦し,解明してきた過程を纏める。また,付記として自然科学の古典を紹介。物理学の面白さが伝わる。


はじめに

 著者は,これまで高校物理教育にたずさわる中で,多くの疑問に出くわした.その多くは,概念や原理・法則の成り立ちについての疑問であった.教科書で一言,1行でさらりと書かれている法則でも,その成り立ちはどうであるのか,気になることが多かった.もともと歴史や文学,哲学などにも強い関心のあった著者にとっては,物理学の応用技術よりも,物理学の成り立ちに関心をもつようになるのは自然ないきさつであった.

 そして,ひとつひとつ調べたことを折々にまとめ,あちらこちらに発表しているうちに,いつのまにやら,力学から原子物理までひととおりの事例をカバーするようになった.本書は,このうち十二の事例を選んで一書に編んだものである.著者の関心の背景を知ってもらうのによいと思われたので,「あとがき」まで,すでに発表したものとした.また,科学の成り立ちを調べるには,古典といわれる著作や論文が必要になってくるので,参考までに「付章」として,古典の所在を記した一文も付け加えた.これも既発表のものである.

 収録にあたっては,字句の訂正や統一をし,その多くは題目も改めた.内容については初出時とほとんどかわっていないが,かなり大幅に書き加えた章や,複数のものを一つの章にしたものなどある.そうはいっても,第 1 章と第 11 章など,初出時には最新の科学研究まで取り入れたリポートであったが,本書に収録するにあたってその後の研究を取り入れることができなかった.

 著者の最大の関心は,科学史そのものよりも,科学史の立場から科学を見ることにあるが,こうして一書に編んでみると,結果として,物理学史の諸相をいろいろな切り口で見た形になっている.そのときの「文章の断片」という意味で,書名を『物理学史断章』としてみた.またそれぞれが何らかの意味で現代物理学につながっているので,「現代物理学への十二の小径」という副題をつけた.各章読み切りなので,どの章からでもお読みいただきたいと思う. (以下省略)

 

第1章 重力の逆二乗法則はどこまで正しいか―検証実験の系譜(1.寺田寅彦の『物理学序説』から  2.ニュートンによる逆二乗法則の確立 3.オイラーの逆二乗法則の論証 4.宇宙的規模の距離における逆二乗法則の検証 5.実験室規模の距離における逆二乗法則の直接的検証 6.万有引力定数 G の測定と逆二乗法則の間接的検証 7.逆二乗法則の精度) 第2章 アトウッドとその器械―その構造と実験目的―(1.とりあげられなくなったアトウッドの器械 2.人間アトウッド(1746~1784) 3.アトウッドの器械の構造 4.アトウッドの実験原理と内容 5.アトウッドの実験目的 ) 第3章 運動物体がもつ「力」をいかに表わすか―カントの『活力測定考』に見る活力論 (1.活力論争とカント 2.『活力測定考』の評価 3.『活力測定考』の大要 4.活力論争の今日的評価 5.『活力測定考』に見る力学的問題の例 6.デカルトとライプニッツの力の概念 7.カントの力の概念 8.力の概念のその後 9.力概念のわかりにくさ) 第4章 自然は真空を嫌うか―大気圧の概念の成立―(1.大気の海 2.大気圧の概念と真空嫌悪説 3.ガリレイの実験 4.トリチェリの実験 5.パスカルとペリエの実験 6.ゲーリッケの実験 7.ドルトンの気象観測 8.実験科学の精神と新しいパスカル像 9.ふたたび真空とは) 第5章 一定の仕事からどれだけの熱が発生するか―ジュールによる熱の仕事当量の測定―(1.熱の仕事当量とジュールの実験 2.ジュールの原論文の所在 3.電気的方法による実験 4.空気の断熱圧縮・膨張を利用する実験 5.羽根車による液体の攪拌実験 6.固体の摩擦による実験 7.執念ともいえるジュールの研究) 第 6 章 音速の理論式の成立をめぐって―ニュートンとラプラス―(1.音速の式 2.測定以前 3.最初の音速の測定実験 4.その後の音速の測定実験 5.ニュートンの音速理論 6.ラプラスの音速理論 7.ラプラス以後の実験と応用 付録 1.音速の理論式の今日的導出 付録 2.音速の理論式と実験式との関係) 第 7 章 光の折れ曲が―屈折の法則の成立―(1.光の屈折の法則) 2.先駆者たち 3.スネルとデカルトによる屈折の法則の成立 4.ホイヘンスの波動説と屈折の法則 5.ニュートンの粒子説と屈折の法則 6.アインシュタインの光量子説と屈折の法則) 第8章 光も回折をおこすか―歴史における光の回折現象―(1.光の回折現象 2.グリマルディによる最初の発見 3.ニュートンの粒子説と回折の実験 4.ヤングによる波動説の復活と回折の説明 5.フレネルによる回折現象の決定的説明と波動説の確立 6.光の波動説の確立) 第 9 章 空はなぜ青いのか―先人たちの研究史―117(1.空の青さを見つめていると 2.ダ・ビンチの場合 3.アタナシウス・キルヒャーの場合 4.ニュートンの場合 5.チンダルの場合 6.レイリーの場合 7.青い地球をつくりだすもの)第 10 章 クーロンとその法則について― 静電気力と磁気力の逆二乗法則の成立 ―(1.クーロンの法則  2.クーロンの原論文とその所在 3.静電気力の測定実験 4.磁気力の測定実験 5.実験的基礎  6.クーロンの法則の成立後の発展) 第 11 章 静電気力の逆二乗法則はどこまで正しいか― 検証実験の系譜 ―(1.クーロンの法則と検証実験 2.検証実験の原理と方法 3.プリーストリの実験 4.キャベンディシュの実験 5.マクスウェルの実験 ― 19 世紀の検証実験 6.プリムトンらの実験 ― 20 世紀前半の検証実験 7.ウィリアムズらの実験 ― 20 世紀後半の検証実験 8.検証実験と技術・理論の発展 付録.キャベンディシュの式の追計算) 第12章 光で電子をたたきだす―光電効果をめぐる論争― (1.光電効果をめぐる問題 2.発見,そして初期の研究 3.レナートの研究 4.アインシュタインの光量子説 5.ゾンマーフェルトの共鳴理論 6.諸家の立場とその後)付 章 自然科学の古典をどこに求めるか(1.科学史と科学の古典 2.科学古典叢書から 3.科学古典論文集から 4.一般の全集・文庫から 5.学会誌や大学の研究紀要から 6.欧語の科学古典叢書・論文集から 7.科学の古典の解説書および研究手引書と年表) あとがきにかえて(学生運動から物理学史研究へ ―― 山本義隆 ――  ある若き科学史家の死 ―― 広重 徹 ―― ) 初出一覧 事項索引 人名索引

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