道徳回帰とモダニティ

デュルケームからハバーマスールーマンへ

道徳回帰とモダニティ

基盤喪失する道徳,公共性の社会学的考察

著者 三上 剛史
ジャンル 社会学 > 社会学理論
出版年月日 2003/10/15
ISBN 9784769909897
判型・ページ数 A5・228ページ
定価 本体3,100円+税
在庫 在庫あり

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今日、道徳と公共性の社会的・心的基盤は喪失しつつある。近代社会では問われなかった中身を現代の我々は改めて問わなければならない。本書は、デュルケームによって明確化されタルコット・パーソンズに引き継がれた社会学の理論的主脈である「社会は道徳的存在である」という前提を疑う、意欲的な道徳的知の社会学。


はじめに

この本を書く過程で幾度となく自問自答してみた。「道徳という言葉を簡単に割り切って捉えすぎていないか」「道徳というものは社会にとって本質的な、そもそも言語化しにくい領域であるから、もっと慎重でなければいけないのではないか」「ルーマン社会学のドライな社会観、人間観に引っ張られてはいないか」等々。しかし何度そう問い返してみても、結局は同じ結論に戻ってくる。道徳に現代を託すことはむずかしい。そして次第にその確信は強固なものとなっていった。

 途中省略

 遺伝子操作や環境問題、グローバル化などの、まったく新しい問題群と直面せざるをえないわれわれが目指すべきことは、近代の成果を基礎にしたうえでの近代批判であり、解決困難な問題を「前近代」に投げ込んで宗教や共同体に回帰したり、「心」や「人間性」などの、それ自身が近代精神の産物であるような実体化された言葉の操作で誤魔化したりすることではないはずである。現代のような時代であるからこそ、道徳に可能なこととそうでないこととの区別を明確にし、道徳という概念が引きずっている枷から社会と人間を解き放つことが求められねばならない。これはまた、現代社会の中で道徳の場所をそれにふさわしい形で確保することでもある。
 本書ではこのような理論的営みを、デュルケームからユルゲン・ハバーマスとニクラス・ルーマンへという方向を念頭に置いたうえで幾つかの角度から考察し、道徳の持つ可能性について検討を加えたい。

第一部 道徳論の社会学的地平とモダニティ 序章 道徳回帰の理論的布置  一 道徳的問題関心のリバイバル  二 善と正義と共同体  三  道徳とアイデンティティ  四 バウマンとポストモダン倫理 第一章 道徳論のルーマンとハバーマス  一 道徳論のルーマン 1 社会学的道徳理論 2 道徳コードと相互浸透 3 リスク社会の道徳 4 モラルによる統合の断念 二 ハバーマスの討議倫理学 1 道徳の討議理論 2 道徳段階と正義の問題 3 モラルとエティック 第二章 道徳論の地平と近代  一 道徳と社会 1 「社会」という問題 2 社会と個人を結ぶこと 3 社会と個人を〈切る〉こと 二 「道徳」という構想 1 複雑性縮減の定点 2 道徳の近代 三 道徳の秋 1 道徳の脱社会化 2 道徳の物語  第二部 公共性の理論と構造 第三章 公共性概念とモダニティ 88  序 1 新しい公共性論の要請 2 「大きな物語」と公共性 3 問題領域としての公共性   一 公共性と社会システム 1 「市民的公共性」という範型 2 「生活世界の植民地化」と「自律的公共性」 3 「アソシエーション関係」と「新しい社会運動」 4 「統治不能」と「中心のない社会」 二 中心化の思想を超えて―合意モデルからの離脱― 1 合意としての公共性 2 再中心化による物語の修復 3 政治的公共性とコントロールの思想 三 複合社会の公共空間 1 「新しい社会運動」とアイデンティティ 2 集合的アイデンティティと「公共空間」 3 「新しい社会運動」の展望  四 主体化の思想を超えて―アイデンティティ・モデルからの離脱― 五 新たな公共空間の可能性  1 リスク社会のシステム 2 〈機能的連帯〉と公共空間 第四章 公共性論の構図と共同性  一 公共性論の構図 1 政治的公共性論 2 私化論的公共性論 3 情報論的公共性論 二 対照性と布置連関 1 場と対立項 2 共存、合意、演技 3 公共性論の独占と変容 三 非営利セクター論―国家、市場、共同体―  四 公共性と共同性 1 公共性概念の変遷  2 共同性概念 3 微分される「公」 第三部 社会学と規範主義的理論構成 第五章 デュルケームからパーソンズを経てハバーマスとルーマンへ  一  二つのデュルケーム論 1 ハバーマスのデュルケーム評価 2 デュルケーム道徳論に対するルーマンの保留 二  パーソンズ受容と規範 1 ハバーマスのパーソンズ受容 2 行為概念と価値の物象化 3 価値論とシステム論 4 平準化批判と近代化論 5 規範主義の継承 三 規範主義からの離脱―ギデンズ、グルドナー、ルーマン―  第六章 「大きな物語」なき後の社会学とシステム理論 1 ポストモダニティの社会学 2 共有価値からコンセンサスへ 3 「ノーマルなものは不確実である」 4 モダンと規範的秩序

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