海のブラックバス サキグロタマツメタ

外来生物の生物学と水産学

海のブラックバス サキグロタマツメタ

謎の多かったアサリ食害生物の全貌を紹介

著者 大越 健嗣 編著
大越 和加 編著
土屋 光太郎
ジャンル 海洋生物学 > 生物学一般
出版年月日 2011/02/21
ISBN 9784769912347
判型・ページ数 A5・244ページ
定価 本体3,200円+税
在庫 在庫あり

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各地で潮干狩りを中止に追いやったアサリの天敵 巻貝サキグロタマツメタ。被害は拡大するもののこの巻貝の生態・生理、侵入経路などは謎に包まれていた。本書は、編者らが、地道な観察、研究の成果を基礎に、多数の貴重な写真を多数配置しこの食害生物の全貌を明らかにした初の専門書。


はじめに

 2004年春、松島湾に面する宮城県一の潮干狩り場から突然アサリが消えた。潮干狩り場は、開口してから数日で閉鎖になった。その後、湾内の潮干狩り場からは次々とアサリが消え、湾内での潮干狩りはほとんど中止になり現在に至っている。松島湾の一角、里浜では3000年前の縄文時代からアサリ捕りが行われていた。庶民の楽しみとして江戸時代からはじまった「潮干狩り」には300年の歴史がある。豊かな海、松島湾で3000年続いたアサリ採りの歴史、300年続いた潮干狩りの文化が、数年前から途絶えた。
 その原因は北朝鮮や中国から輸入したアサリに紛れて国内に移入した巻貝のサキグロタマツメタによる食害だった。貝殻の先が黒く在来種のアサリを大量に食害することからついた別名が「海のブラックバス」。数年前までは水産の現場にも一般にもまったく知られていなかったサキグロタマツメタは、北は青森県から南は熊本県まで、日本各地に分布を広げ、あちこちで食害が問題になっている。
 2004年以降、テレビや新聞・雑誌などに100回以上登場し、すっかりその名が知られたサキグロタマツメタ。しかし、その生態は謎に包まれている。いつごろ、どこから、どのようにして日本にやってきたのか? なぜ宮城県や福島県では大発生しているのか? アサリをどのぐらい食べるのか? アサリしか食べないのか? どうやって駆除したらいいのか? そもそも駆除すべきなのか…。外来生物法の施行、北朝鮮への制裁にかかわるアサリ輸入禁止と偽装迂回輸入問題など、サキグロタマツメタは国際間の問題にもかかわり、国会の委員会での議論にも上っている。このような、水産をはじめとして環境、歴史、文化、政治、国際など様々な問題に関わっていながら、その実態はほとんど知られていない貝は皆無であろう。
 そこで、本書はこれまでのサキグロタマツメタに関する知見を集積し、水産の現場、研究者、一般にも広く、わかりやすく提供することを目的に企画された。サキグロタマツメタの水産現場での問題のこれまでの経緯と現状、今後の展望について述べるとともに、サキグロタマツメタの生物学的特性を明らかにし、外来生物としての視点からみたサキグロタマツメタについても言及した。また、生物を人為的に大量に移動することの意味、経済と環境、あるいは生物多様性とのかかわりについてサキグロタマツメタを視点として考察した。できる限り最新の知見を盛り込むことを心掛けたため、学会や研究会などでは発表したが、論文としては出版されていない内容も含まれていることをご理解いただきたい。複数の著者により執筆され、形態から法律まで幅広い内容を扱っていることから文体の統一も難しかったが、どの章から読んでも理解できるような構成にした。水産の現場の問題としてだけでなく、サキグロタマツメタという貝を通して見えてくる人間社会の問題についても読者が考えるきっかけになれば編者としては望外の喜びである。

第1編 サキグロタマツメタとは? 1章 絶滅寸前,外来移入,食害生物-3つの顔をもつ貝(大越健嗣)  1-1 絶滅寸前の日本在来のサキグロタマツメタ  1-2 サキグロタマツメタは外来移入種  1-3 食害生物となったサキグロタマツメタ  1-4 サキグロタマツメタの分布  1-5 サキグロタマツメタの駆除  コラム 韓国セマングム干拓とサキグロタマツメタ研究(佐藤慎一) 第2編 サキグロタマツメタの生物学 2章 サキグロタマツメタの解剖(土屋光太郎・竹山佳奈)  2-1 軟体部の外部形態  2-2 外套膜 2-3 消化器官 2-4 生殖器官 2-5 中枢神経系  3章 サキグロタマツメタの遺伝子解析(浜口昌巳) 3-1 サキグロタマツメタはどこからきたのか  3-2 遺伝子からサキグロタマツメタの分布拡大を推理する  3-3 今後の課題 4章 成熟と産卵,初期発生と成長(大越健嗣・山内 束) 4-1 秋に干潟に出現する砂茶碗 4-2 産卵(卵塊形成) 4-3 成 熟 4-4 孵出(ハッチアウト)と初期成長 4-5 成長速度の推定 4-6 生殖生態 4-7 今後の展望 5章 捕食・穿孔行動(大越健嗣・大越和加) 5-1 穴をあけられた貝殻の特徴  5-2 穿孔と捕食 5-3 アサリ以外の貝類の捕食 5-4 サキグロタマツメタを捕食する生物 コラム アサリにあけられた穴はなぜ左の殻に多いのか? (佐藤慎一) 6章 フローティング,移動,捕食・被食関係(大越健嗣) 6-1 サキグロタマツメタ分布拡大の謎 6-2 這って移動するサキグロタマツメタ 6-3 フローティングで移動するサキグロタマツメタ 6-4 安定同位体比によるサキグロタマツメタの捕食・被食関係の推定 第3編 サキグロタマツメタの水産学と環境学 7章 食害防除・駆除対策(須藤篤史) 7-1 宮城県のアサリ漁業 7-2 サキグロタマツメタの最初の報告 7-3 潮干狩り場の閉鎖 7-4 宮城県の対応 7-5 駆除対策 7-6 食害防除対策 7-7 現状と反省点 7-8 今後の対応  8章 水産物の移動に紛れて分布を拡大する生物たち(大越和加) 8-1 ホストと共生あるいは寄生関係をもつ非意図的移入種 8-2 輸入水産物への混入-偶発的に移入した非意図的移入種 8-3 外国に移出した生物-マガキとオウウヨウラク コラム サキグロタマツメタの成分と料理法(大越健嗣) 第4編 外来生物問題の深層 9章 サキグロタマツメタをめぐる法律と国際問題(岩崎敬二) 9-1 サキグロタマツメタは「特定外来生物」ではない 9-2 外来海洋生物がもたらす様々な被害や損害 9-3 4種類の外来生物 9-4 外来海洋生物の移入手段 9-5 外来生物問題に関する条約と海外での法的規制 9-6 日本の外来生物に対する法的規制 9-7 外来海洋生物問題と国際問題 9-8 外来海洋生物の移入の阻止と防除に向けて 10章 サキグロタマツメタが問いかけるもの(大越健嗣) 10-1 トキの絶滅と絶滅寸前のサキグロタマツメタ 10-2 輸入アサリの生物多様性への影響 10-3 なぜ,移入は続きサキグロタマツメタは減らないのか? 10-4 国産アサリという幻想 10-5 JAS法の改正 10-6 現実的対応 10-7 新しい潮干狩りの提案   ショートストーリー サキグロたまちゃんの大冒険(大越健嗣 絵:やす)

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