農・水産資源の有効利用とゼロエミッション

農・水産資源の有効利用とゼロエミッション

未利用・廃棄物の新たな利用法や再利用技術

著者 坂口 守彦
高橋 是太郎 編著
薬師堂 謙一 他著
ジャンル 海洋学・環境科学 > 環境
出版年月日 2011/10/03
ISBN 9784769912620
判型・ページ数 A5・250ページ
定価 本体4,500円+税
在庫 在庫あり

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循環型社会の構築が早急な課題となっているが、本書では、農畜産業・水産業・食品産業の各分野における未利用物の新たな利用法・利用技術、廃棄物の再利用技術などに関する最新の情報とゼロエミッションの実施例を紹介。水産学・農畜産学・食品工学・薬学・農芸化学・環境科学などに携わる方必携の書。


はじめに

 われわれが生息している地球は,まことに広大であるように見えるが,食料資源となるものには年々枯渇が心配されるに至っている.そのうえ,現在環境の悪化が速かに進行しつつあり,これらを重層して考えると,今世紀における人類の食糧供給ひいては生存自体にも濃い暗雲がたちこめていると思わざるをえない.
 そこで,これを機に広大な海洋(他の水圏も含む)から得られる魚介類,海藻をはじめとする既存の水産資源を見なおす作業にとりかかる必要がある.また,資源のうちすでに食料,飼肥料,工業製品などに利用されているものだけでなく,未利用のまま投棄されているものにも着目し,将来における有効利用の可能性を検討する作業は急務であろう.
 水産分野における有効利用に関する取り組みは,すでに以前から様々な形で実践されてはいたが,平成12
年度日本水産学会(於福井市)で「水産ゼロエミッションの現状と課題」が,つづいて同13 年日本水産学会創立70
周年記念サテライトシンポジウムとして京都で「水産物の有効利用法開発に関する国際シンポジウム」が開かれて,今後進むべき道が提示されたように思われる.
 そして,平成22 年度日本水産学会(於藤沢市)では,シンポジウム「水産物の有効利用とゼロエミッション」が開催された.本書はこのシンポジウムの記録をとりまとめたものである.ここでは冒頭に示した,きわめて困難な状況下にあっては,あらゆる産業が持続可能な発展を意識した活動をせまられている.そのような意味において,農畜産業や食品産業の状況を垣間見ることは有意義であると考え,本シンポジウムでは「農畜産・食品系産業の廃棄物と有効利用」と題する項目を設けた.このシンポジウムの講演者に加えて,本書では特に「農産系」の部分に執筆者を補充して内容の充実をはかることとした.
 本書を編集する過程で,平成23 年3 月11 日に東日本大震災が発生し,多くの貴重な人命が失われ,同時にかぞえきれない資産の流失,これらに付随した深い失望や絶望などのありさまを目のあたりにした.この震災によって水産界や他の領域が被った被害はきわめて甚大ではあるが,将来への発展を期して,徐々に復興への足どりをたしかなものとしなくてはならない.今後は農畜産・食品系産業とも緊密に連携しつつ,循環型社会の構築に意を注ぐ必要がある.それはいまやわが国だけではなく,世界的な命題となっているからである.
 なお,本シンポジウムでは,「現状と課題」,「農畜産・食品系産業の廃棄物と有効利用」,「水産廃棄物と有効利用」,「厄介ものとその利用」などの他に「ゼロエミッションの実施例」という項目もとりあげた.一般に有効利用とゼロエミッションの区別は明確ではないが,本書では有効利用の流れのなかでもっとも下流に位置し,環境との間で比較的関連性の高い領域や有毒物質の除去などの項目をとりあげて章を構成することとした.
 本書が,水産・農畜・食品などの関係者はもとより農芸化学,薬学,環境科学などに関連する諸氏の目にとまり,何かのお役に立てば望外の幸せである.(後略)

Ⅰ部 序論 1章 現状と課題-水産副生産物の完全有効利用化への道(高橋是太郎)  §1.実用化もしくは実用化が期待されている廃棄物処理技術の概要  §2.水産廃棄物の状況 §3.水産加工場の廃棄物と処理法  §4.高度利用の方向 Ⅱ部 農畜産・食品系産業の廃棄物と有効利用 2 章 農産系-農作物残渣の有効利用(薬師堂謙一) §1.農産系残渣のカスケード利用(多段階利用) §2.農産系残渣の種類と収集・調整法 §3.医薬品,化粧品,機能性食品原料として利用 §4.飼料利用  §5.マテリアル利用 §6.肥料利用 §7.エネルギー利用  3 章 畜産系(1)-家畜糞尿のエネルギー化 (梅津一孝) §1.家畜糞尿と環境問題 §2.諸外国の畜産環境対策法  §3.わが国の家畜非排泄物適正化法 §4.生産システムの見直しと自然エネルギー利用 §5.バイオガスシステムの現状と課題 4 章 畜産系(2)-テンサイシックジュース・チーズホエー混合原料からのバイオエタノール生産(小田有二) §1.チーズホエーとその利用 §2.チーズホエーからのエタノール生産とその問題点 §3.酵母Kluyveromyces marxianus について §4.カタボライトリプレッション非感受性株の分離およびその性質 §5.実用化に向けたエタノール発酵試験5 章 食品系-食循環の視点から見た有効利用の現状と課題(薮下義文) §1.フードチェーンからの上流への遡及  §2.調理スタイルの変化に伴う魚介類廃棄物のバランス §3.リサイクルチェーンの現状と問題点 §4.給食産業でのリサイクルへの取り組み §5.未利用の魚類と貝殻の利用 §6.消費者が水産資源の世界を変える §7.水産資源のゼロエミッションへの課題 Ⅲ部 水産廃棄物と有効利用 6 章 雑魚・混獲魚-低利用魚類のすり身原料としての有効利用 (森岡克司・野村明) §1.雑 魚 §2.混獲魚 §3.おわりに  7 章 魚腸骨-ここまで進んだ利用技術(伊東芳則) §1.水産廃棄物(魚腸骨)利用の現状 §2.マグロに含まれる成分の利用  8 章 藻 類-養殖コンブ廃棄物を事例として(長野 章) §1.「藻類」廃棄物の現状(函館市を中心にして) §2.有効利用の現状と課題  §3.エネルギーの抽出による有効利用  §4.バイオマスネットワーク構築可能性の検討  §5.バイオマス利活用技術の評価と課題 §6.藻類のバイオマス利活用の課題  9 章 貝 殻-主にホタテ貝殻の利用例について(岡部敏弘・坂本寿信) §1.ホタテ貝殻の成分など §2.プラスチック製品への応用 §3.セメントコンクリートへの利用(港湾構造物) §4.アスファルトコンクリートへの利用(道路舗装材) §5.その他の事例  Ⅳ 部 厄介ものとその利用 10 章 クラゲ類-特定成分と有効利用(横山芳博) §1.クラゲの個体全体を利用する §2.クラゲの特定成分を利用する §3.おわりに 11 章 ヒトデ-産出の実態および処理と利用の取り組み(福士暁彦・佐田正蔵・高橋是太郎) §1.大量排出の実態 §2.有用化促進の試み 12 章 藻類-特にアオサの利用を中心として(内田基晴) §1.アオサ類の利用について §2.淡水植物(ホテイアオイなど)の利用について §3.赤潮藻類の利用について  Ⅴ 部 ゼロエミッションの実施例 13 章 軟体類の処理-ホタテウロおよびイカゴロの脱カドミウムと飼料化(関 秀司) §1.ホタテウロとイカゴロのカドミウム吸・脱着平衡 §2.競争吸着法の原理 §3.競争吸着法の律速過程 §4.処理時間の短縮 §5.カドミウム除去効率の推算 §6.競争吸着法によるカドミウム除去の実施例  14 章  封蔵食品の製造と処理-青魚缶詰工場の事例(難波秀博・信田臣一) §1.資源の有効利用 §2.環境保全活動  15 章  排水処理-主として活性汚泥法を概観する(中村 宏) §1.排水処理技術の現状 §2.余剰汚泥の現状と減容化 §3.余剰汚泥の有効活用 §4.処理水の再利用 §5.まとめ

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