微生物の利用と制御

食の安全から環境保全まで―水産学シリーズ155

微生物の利用と制御

食品・養殖・環境保全に関わる微生物の働き

著者 藤井 建夫 編著
杉田 治男 編著
左子 芳彦 編著
ジャンル 水産学 > 水産学シリーズ
海洋学・環境科学 > 環境
シリーズ 水産学シリーズ
出版年月日 2007/10/05
ISBN 9784769910671
判型・ページ数 A5・142ページ
定価 本体2,600円+税
在庫 在庫あり

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微生物を利用した世界は今日大きく広がっている。食品分野はもちろん、赤潮対策、魚病対策などでは薬の散布にかわる微生物の利用によるより安全な対策が、さらに次世代エネルギーとされる水素生産への微生物利用など、本書はこうした微生物利用の最前線を各分野の第一線の専門家が平易に解説する。


はじめに

 水産微生物学またはそれに近い意味の水産細菌学という言葉が使われだしたのは,1945年前後のことである.すなわち,水産微生物学講座という名前の研究室が木俣正夫先生(京都大学)によって創設され(1947年),谷川英一先生(北海道大学)も『水産細菌学』というタイトルの本を1943年に出版されている(その後1960年に『水産微生物学』と改題).当時はまだ冷蔵庫は普及しておらず,また食料難の時代でもあったことから,水産微生物研究の多くは食品の腐敗とその防止に関するものであったが,1949年に木俣先生が書かれた『食品保蔵学』の緒論では「食品の悪変を防止し,これを安全に保持すると共に更に吾人の嗜好に適し,しかも栄養豊富な食品となすことを目的とする学問を食品保蔵学という」と定義されており,本文中では,サルモネラ,ブドウ球菌,ボツリヌス菌,チフス菌,コレラ菌なども取り上げられていて,すでに「食品安全」も視野にあったことがうかがえる.またこれら食品関係の研究と並行して,漁網の腐朽や魚病など漁業,増養殖に関連した諸問題への対応として海洋細菌や魚病細菌などの研究が門田 元,坂井 稔両先生らを中心に開始されている.その後,社会的に水質汚濁や赤潮,海洋開発などへの関心が高まるにつれ,水産微生物研究の大勢は食品微生物から海洋(水圏)微生物へと移り,今日にいたっている.
 ところで,水産学の対象とするフィールドを,海洋からの食糧生産という観点から模式的にまとめてみると図0・1のようになる.左側が資源生物とそれを取り巻く海洋環境を表し,右側が食糧とその受け手である人間(社会)を示している.中央の矢印は海の資源生物が漁獲,貯蔵,加工,流通などを経て,消費されるまでを示しており,近年HACCPとの関係で農場から食卓まで(From
farm to table)といわれるフードチェーンにも相当する.

 水産微生物の研究はこのように,研究対象は食品から増殖,環境というように多岐にわたるが,研究手法という点では対象が何であれ,基本的には共通している.そのため,海洋微生物の初期の研究は,食品微生物学から転じた専門家によってなされたものが多く見られる.低温貯蔵技術が普及し,基本的な研究課題もあらかた目処がついた食品分野に比べ,未解明の課題の多い海洋分野の研究は魅力的に思えたに相違なかろう.
 本書では,水産学における研究対象と研究手法の関係を図0・2のようにとらえ,広範なフィールドに及ぶ水産微生物学研究の今日的問題を,おもに食品,増養殖,環境の分野について,「微生物の利用と制御」というキーワードで整理してみようとして企画したものである.

I.食品における微生物の利用と制御
1章 食品安全確保における最近の考え方(藤井建夫)
2章 水産食品における微生物の利用(山崎浩司・Dominic K. Bagenda)
3章 食品微生物の遺伝子手法を用いた検査法(高橋 肇・木村 凡)
II.増養殖における微生物利用と制御
4章 魚病原因微生物とその防除の考え方 (川合研児)
5章 プロバイオティクスの魚介類への応用(杉田治男)
6章 微生物による魚病原因ウイルスの制御(吉水守・笠井久会)
7章 海藻のマリンサイレージとしての有効利用(内田基晴)
III.微生物による環境保全
8章 極限環境微生物による地球温暖化への挑戦(西村 宏・左子芳彦)
9章 微生物による赤潮防除(今井一郎)
10章 微生物による有害物質の分解(川合真一郎・黒川優子・松岡須美子)

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