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魚介類アレルゲンの科学

水産学シリーズ164

魚介類アレルゲンの科学

魚介類アレルゲンの最新知見を平易に解説

著者 塩見 一雄 編著
佐伯 宏樹 編著
板垣 康治
ジャンル 水産学 > 水産学シリーズ
食品学 > 食品衛生
シリーズ 水産学シリーズ
出版年月日 2010/03/31
ISBN 9784769912149
判型・ページ数 A5・162ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 オンデマンド制作

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食物アレルギーは今では身近な社会問題となっているが、魚介類はその原因食品の上位を占める。その診断、治療、予防にあたっては、アレルゲンの同定と性状解明、分析法、低減化技術の開発などが不可欠である。水産関係はもとより、医療、食品、栄養関係まで必読といえる。また、一般消費者にも手軽に読めるようできるだけ平易な内容を心がけている。


はじめに

 近年,患者数の増加から食物アレルギーは大きな社会問題になっている.食物アレルギーの大半は,花粉症やダニアレルギーといったよく知られているアレルギー疾患と同様に,典型的なⅠ型アレルギー(即時型アレルギー)である.Ⅰ型アレルギーの場合,アレルギー体質のヒトではアレルギー誘発物質(アレルゲン)に対して特異的なIgE抗体が多量に産生される.IgEはレセプターを表面に持つマスト細胞と結合するが,ここにアレルゲンが侵入してマスト細胞表面のIgEと架橋するように結合すると,マスト細胞から化学伝達物質(ヒスタミン,プロスタグランジン,ロイコトリエンなど)が放出されアレルギー症状が引き起こされる.同じⅠ型アレルギーであっても,食物アレルギーの場合は健康の維持に必須である食物に起因するだけでなく,アナフィラキシーショックにより死亡する危険性があるという点で,他のアレルギー疾患以上に問題は深刻である.
 食物アレルギーの原因食品としては,米,小麦,大豆などの農産物,卵,牛乳などの畜産物が世界的に有名であり,わが国でも同様であると長年考えられてきた.しかし,平成8~11年度に行われた厚生省(現
厚生労働省)食物アレルギー対策検討委員会による全国規模のアンケート調査により,わが国における食物アレルギーの原因食品として魚介類が非常に重要で,特に成人のアレルギーでは原因食品の第1位は甲殻類(えび,かに),第2位は魚類であるという興味深い事実が明らかにされた.わが国では魚介類の消費量が多いので当然の結果かもしれないが,本アンケート調査以降,魚介類アレルギー問題が大きくクローズアップされるようになったのである.
 食物アレルギーによる健康危害を未然に防ぐ方策として,食品表示による消費者への情報提供が有効であると考えられる.わが国ではこの問題にいち早く取り組み,上述の食物アレルギー対策検討委員会によるアンケート調査結果を受けて,平成13年4月に世界に先駆けてアレルギー物質を含む食品の表示制度を施行した(1年間の猶予期間あり).本制度の開始当時は,症例数が多いまたは重篤な症例(アナフィラキシーショック症例)が多い5品目(小麦,そば,卵,乳,落花生)が厚生労働省の省令により特定原材料として定められ,これらを原材料として用いた加工食品ではその旨を表示することが義務づけられた.また,魚介類7品目(あわび,いか,いくら,えび,かに,さけ,さば)を含む19品目は通知により特定原材料に準ずるものと定められ,表示することが推奨された.その後,平成16年10月にはバナナが特定原材料に準ずる品目として追加され,さらに平成20年6月3日には「えび」,「かに」が特定原材料に格上げされ表示が義務化されることになった(2年間の猶予期間あり).現時点では,特定原材料は7品目,特定原材料に準ずるものは18品目となっている.
 魚介類アレルギーの正確な診断,適切な治療,確実な予防のためには,医療分野の取り組みだけでは限界があり,アレルゲンの同定と性状解明,分析法や低減化技術の開発など,アレルゲンにターゲットを当てた基礎研究が不可欠である.ここ数年の間に,魚介類アレルゲンに関する基礎研究は水産分野において著しい進展をみせてきたので,最新の知見を整理し今後の研究方向を討議するために「魚介類アレルゲン研究の最前線」と題したシンポジウムを企画し,平成21年度日本水産学会春季大会開催時に実施した.「えび」と「かに」を特定原材料に格上げする厚生労働省の省令が施行されたのは平成20年6月であるので,シンポジウムは魚介類アレルギー問題に対する社会の関心が改めて高まってきた中で行われたのである.なお,省令の施行は,甲殻類アレルゲンに関する科学的知見の蓄積ならびに食品監視に必要な甲殻類検査キットの開発という研究成果が裏付けになっている.こうした背景のもとに,魚介類アレルゲンに関する最新の知見を成書としてまとめておくことは魚介類アレルギー問題の解決にとって有意義であるだけでなく,「えび」,「かに」の表示が義務化されたというようにタイミング的にも絶好であると判断し,シンポジウムの内容を中心に水産学シリーズとして刊行するに至った.
 本書は魚介類アレルゲンにターゲットを絞り,その諸性状,低減化,分析方法などに関する最新の知見と今後の課題をまとめた専門性の高いものである.しかし,水産関係や食品関係の大学・研究機関の研究者・学生はもとより,食物アレルギー問題に取り組んでいる医療従事者,食品製造従事者,食品衛生行政担当者,学校給食現場の栄養士,食物アレルギー児を持つ家族,さらには食の安全・安心に関心の高い一般消費者も含めて幅広い読者層を想定しているので,各著者にはできるだけ平易な記述をお願いした.ご一読の上,ご意見等をお寄せいただければ幸いである.

I.魚介類アレルゲンの本体と性状
1章 魚類アレルゲンの本体と性状(濱田友貴)
2章 甲殻類アレルゲンの本体と性状(嶋倉邦嘉)
3章 軟体動物アレルゲンの本体と性状(佐伯宏樹)
4章 魚卵アレルゲンの本体と性状(清水 裕)
5章 アニサキスアレルゲンの本体と性状(小林征洋)

II.魚介類アレルゲンの低減化
6章 加工過程における低減化(板垣康治)
7章 タンパク質改変による低減化(塩見一雄)

III.魚介類アレルゲンの分析法
8章 ELISA法(清木興介・柴原裕亮)
9章 PCR法(石崎松一郎)
10章 その他の分析法(潮 秀樹)

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