海洋環境を考える

海洋環境問題の変遷と課題

海洋環境を考える
著者 日本海洋学会
ジャンル 海洋学・環境科学 > 環境
出版年月日 1994/11/15
ISBN 9784769907893
判型・ページ数 B5・200ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり

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1950~60 年代に工業開発に伴う埋め立てなどによって公害が社会問題化した。その後,関係筋の努力によりいくらか改善はされたが,近年の大規模開発により海洋環境が大きく変えられようとしている。本書はこの現状をとらえ,各海域別の環境問題とその変遷とを分析する。


はじめに

 1950年代後半~60年代に東京湾,瀬戸内海をはじめとした閉鎖性海域で工業開発に伴う埋め立てなどが急速に進むとともに,沿岸で「公害」の社会問題が深刻化した.これに対して国の行政は1970年に水質汚濁防止法,海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律,1973年に瀬戸内海環境保全特別措置法,1974年に国土利用計画法を施行し,また,各自治体でも独自の公害防止条例の施行や公害の試験研究機関の設立などに取り組んだ.この時期には環境に対する国民意識の高揚とともに環境保護運動も盛んになり,これらのことが大きく環境行政に影響を及ぼした.多大な努力をはらった結果,都市部の悪臭と黒くよどんだ河川や海は改善され,現在では沿岸は幾らか本来の海の機能が回復されるに至っている.また,自然の保護を唱ったラムサール条約に対して,わが国の沿岸海域では東洋湾の谷津干潟が初めて保存の対象域に決まった.

 しかしながら近年,都市機能の多様化,高度化してきた産業構造の変化への対応,土地の有効利用,大都市の地価の高騰,さらには都市部への人口の集中,増加や産業界の無謀な「開発指向」などさまざまな原因により,東京や大阪などの大都市近郊の内湾では大規模な開発計画が社会的に注目を浴び,海洋環境が大きくかえられようとしている.特に最近の開発の特徴は,空港建設のための埋め立て,橋脚の設置,ゴミによる埋め立て,人工島建設,その埋立地の利用と再開発,港湾の整備,これらの防災のための護岸工事など開発が多岐にわたり,開発予定地が内湾に集中していることである.これらの開発が閉鎖系の海域の浅海の消失,流れ環境の変化をもたらし周辺の生態系に大きな影響を及ぼすことはさけられない.

 一方,国際社会に目をむけると,アジアをはじめとする発展途上国では著しい経済活動の活発化が起こっている.そこではかつてわが国が経験してきたような沿岸の環境汚染が次第に問題になりつつあり,そこにはわが国からの企業進出,ODAによる海外援助による開発行為も関与してきている.発展途上国の沿岸においては,公害対策の遅れによって汚染が進み,一部では「赤潮」が頻繁に発生するなどの環境悪化が進んできている.さらにまた,農薬,科学物質の無秩序な使用によって,沿岸のみならず外洋への汚染の拡大も進行しつつある.産業廃棄物や放射性物質の海洋投棄,温室効果気体の急激な放出などもまた国際的な環境問題となりつつある.とくに温暖化に伴う海面上昇の予測は太平洋,インド洋の島国にとっては,大きな衝撃である.これらの事柄は,この20年間あまりで公害問題が国内外の政治,社会の変化に伴って大きく変化し,汚染は沿岸から外洋へ拡大するとともに地球規模環境問題へと変化してきたことを物語っている.

 1973年4月8日に日本海洋学会が「海洋環境に関する声明」を発表し,学会として積極的にこの問題に取り組むことを社会に声明するとともに,新たに「海洋環境問題委員会」を設置した.設置当時は沿岸の「公害」が大きな社会問題であり,委員会は海洋環境問題を会員の共通認識とするために,1975年その手始めとして多くの学会員と沿岸環境調査にかかわる関係者への情報の伝達を目的に,「海洋環境汚染に関連する調査研究の現状と問題点」を学会誌の特集号として出版した.さらにまた,当時は沿岸の観測調査が広く行われはじめていたにもかかわらず調査観測の指針が十分でなかったために,観測調査のマニュアル作りに取りかかり,その後に3編の指針およびマニュアルを出版した.この間も海洋環境問題委員会は学会開催時にシンポジウムを企画し,多くの会員や関係者の努力によって学会の環境問題の中心的な委員会として機能してきた.委員会の設立から今年が20周年であることを機に,改めて環境問題への認識と今後の委員会の活動への一層の理解を得るため,この20年間の海洋環境問題の変貌を総括し,今後に残された課題をまとめて出版することを企画した.この出版企画はこの20年間の海洋環境問題の変貌と今後の課題を整理することが目的であるために以下の3部構成とした.第1部はこれまでの沿岸の「公害」から「環境問題」への変貌の統括,第2部は東京湾などの地域別の現状と問題点,第3部は海洋環境問題の新たな局面として東南アジアの現状,地球環境問題の現状,そしてわが国の環境アセスメントの課題などを述べている.

 海洋環境問題は社会とのかかわりが大きく,海洋学のみでは解決できない問題になってきている.そこで海洋学会の関係者の積極的な協力を期待するとともに,他分野との積極的な意見交換を行い,「明日の海」を考えていくことが必要になっている.本書の内容には不備な点も多く残されていると思われるが,それらは日本海洋学会・環境問題委員会の今後の課題とした.また,本書が海洋環境の未来を考える基礎になれば幸いである.

序文

第1部 「この20年を顧みる」
1 沿岸の汚染機構
2 沿岸の開発
3 有害物質による汚染

第2部 「海の現状」
1 東京湾
2 瀬戸内海
3 沖縄

第3部 「あらたな局面」
1 水質環境基準
2 海洋汚染の国際事情
3 地球規模の環境問題
4 沿岸の環境アセスメント

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