魚類のDNA

分子遺伝学的アプローチ

魚類のDNA

魚類の分子遺伝学的手法を用いた研究を網羅。

著者 青木 宙
隆島 史夫
平野 哲也
ジャンル 海洋生物学 > 生物学一般
出版年月日 1997/06/10
ISBN 9784769908470
判型・ページ数 A5・496ページ
定価 本体7,000円+税
在庫 在庫あり

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生物の機能と活動は細胞核中の遺伝子(DNA)にその基盤を置く。近年は遺伝子操作技術が日進月歩で発達し,遺伝子の単離分析や遺伝子導入動物の作出が万能になった。本書は,それぞれの領域における代表的な研究者による最新情報を中心に整理されており,分子遺伝学研究の例と現状を知るのに最も適した著書であるといえよう。


はじめに

 DNA を切断する制限酵素,切断した DNA を連結させる酵素リガーゼおよび遺伝子の運び屋ベクターが 1973 年に発見され,遺伝子操作の幕開けとなった.それ以来,Polymerase chain reaction(PCR)を代表とする新しい組み換えDNA 技術の発見,あるいは改良が相次ぎ,最近では,遺伝子操作に関連するキットも市販される時代になり,秘伝的な実験法からいずれの実験室でも手軽に行える操作法になってきている.
 この組み換え DNA 技術の進展は,魚類の遺伝子の研究においても飛躍的な発展をもたらした.魚類の遺伝子構造とその調節領域・成魚機構の解明のみならず,タンパク質の一次構造の決定,各ドメインの構造・機能,生理活性物質産生遺伝子の有効利用,遺伝子の発現機能の解明およびトランスジェニック魚の作出など,飛躍的な発展を遂げた.
 本書においては,現在までに行われてきた魚類の分子遺伝学的手法を用いた研究を網羅している.最初に,分子遺伝学の変遷と発展について,最近開発された新しい遺伝子操作法,魚類では飛躍的な発展を遂げた染色体工学およびトランスジェニック魚作出のための遺伝子導入法および発現ベクターについて解説し,次いで,魚類の分類,系群,多様性あるいは系統進化を論じた DNA 多型と魚類の集団の多様性解析および散在性反復配列を用いた魚類の系統進化の推定について述べる.
 さらに,魚類よりクローン化された各遺伝子,グロビン,ミオシンあるいはアクチン遺伝子,ストレス応答に係わる遺伝子,薬物代謝に関与する遺伝子,種々のホルモン遺伝子,ガン関連遺伝子および生体防御に関与する遺伝子などについて解説される.
 本書が,水産学分野の若い研究者や大学院学生に世界の流れと呼応した独創的研究を展開させるきっかけを提供し,21 世紀における生物生産科学の進展に寄与するよう願ってやまない.ただし,前述したように,遺伝子組み換え技術は日進月歩で進化しており,本書で紹介した内容についても新しいデータがさらに蓄積されつつあり,数年後には新たな企画のもとにそれら新しい研究データを追加し,刊行されることを切に願っている.
 本書は魚類の分子生理学,分子生化学,分子遺伝学あるいは育種学の方面で活躍している第一線の研究者に執筆を依頼したが,ご多忙な執筆者の方々のご協力を心から感謝する次第である.

1.分子遺伝学の変遷と展望 (正木春彦)
2.遺伝子の解析法 (廣野育生)
3.染色体操作 (荒井克俊)
4.トランスジェニックメダカと ES 細胞(尾里建二郎・若松佑子)
5.遺伝子導入魚の作出と外来遺伝子の発現(吉崎悟朗・隆島史夫)
6.有用発現ベクターの開発 (豊原治彦)
7.DNA 多型と魚類集団の多様性解析(谷口順彦・高木基裕)
8.散在性反復配列による系統進化推定法(高橋一彦・岡田典弘)
9.グロビン遺伝子 (青木 宙・宮田雅人)
10.筋肉タンパク質 (渡部終五)
11.ストレス応答に関わる遺伝子 (山下倫明)
12.薬物代謝に関与する P450 遺伝子(板倉隆夫)
13.神経ホルモン遺伝子 (兵藤 晋)
14.浸透圧調節に関与するホルモン遺伝子(竹井祥郎)
15.成長ホルモン/プロラクチン遺伝子ファミリー(小野雅夫)
16.細胞成長因子 (山下伸也)
17.配偶子形成に関わる遺伝子(長濱嘉孝・東藤 孝)
18.コネクシン(ギャップ結合タンパク質)遺伝子(吉崎悟朗・Reynaldo Patino・隆島史夫)
19.性決定に関連するDNA/遺伝子(中山一郎)
20.がん遺伝子とがん抑制遺伝子(岡本信明・正仁親王)
21.トランスフェリン遺伝子(青木 宙・廣野育生)
22.魚類の免疫系遺伝子 (黒沢良和)

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