海洋観測入門

海洋観測入門

現在の海洋観測技術の全体像を平易に解説

著者 柳 哲雄
ジャンル 海洋学・環境科学 > 海洋
出版年月日 2002/02/08
ISBN 9784769909583
判型・ページ数 A5・110ページ
定価 本体1,500円+税
在庫 在庫あり

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海洋は地球環境に重要な役割を果たす。その状態と変動を定量的に明らかにする海洋観測技術は,人工衛星からのリーモートセンシング技術など,ここ十数年で目覚しい発達を遂げた。一方で観測分野の細分化が進み技術の専門性も高まっている。本書は初心者でも分りやすいように現在の海洋観測の全体像を俯瞰できるよう纏められている。


はじめに

 人類による化石燃料(石油・石炭)の使用が主な原因で,大気中の二酸化炭素濃度が増加し,その温室効果によって地球の平均気温が上昇するという地球温暖化問題に対して,海洋が重要な役割を果たすことが指摘されている.海洋の熱容量が大気のそれの約千倍であるが故に,平均気温の上昇に関連した海水温の上昇が気候を大きく変化させるからである.そのような直接的な熱的影響のみならず,海水温の変化は海洋・大気間の二酸化炭素のやりとりにも大きな影響を与え,大気中の二酸化炭素濃度の変動にも重要な役割を果たす.
 それゆえ,世界全体の海洋の状態とその変動を明らかにするという海洋観測の科学的・社会的重要性はますます増大し,近年 WOCE(World Ocean Circulation Experiment;世界海洋循環実験),CLIVAR(Climate Variability and Predictability;気候変動とその予測可能性),IGBP(International Geosphere-Biosphere Progaramme;国際地圏生物圏研究計画)など様々な国際海洋観測プロジェクトが組織され,実行されてきた.
 このような外洋の海洋環境問題のみならず,陸近くの沿岸海域においても,富栄養化に伴う赤潮や貧酸素水塊の発生,環境ホルモンによる海洋生物異変の問題など,海洋観測を行って,問題解決のための適切な対応策を立案することが必要とされる,沿岸海洋環境問題も多く存在する.
 しかし,人類は基本的には陸上の生物なので,私たちの生活の場ではない海洋中で何がどのように起こっているのかを正確に把握することは容易ではない.海洋中で起こっていることを定量的に明らかにするために,広大な海洋中の多くの観測点で,短い時間間隔の観測を,同時に繰り返し行うためには膨大な予算が必要となる.
 したがって,許された予算の範囲内で最も効果的な観測計画を立案し,それをできるだけ長時間継続することが,地球環境変動に関連した海洋の状態の時間・空間変動特性を正確に把握していくうえで,最も重要となる.そのような合理的な海洋観測計画を立案するためには,どのような手段を用いればどのような観測を行うことが可能なのか,現在の海洋観測の全容をまず理解しておかなければならない.
 海洋観測の歴史はそれほど古くはない.しかし,ここ十数年の海洋観測技術の発達は目覚ましく,人工衛星からのリモートセンシング技術を初めとして,私が学生の頃には全く思いもよらなかったような手法で海洋観測が行われるようになってきた.同時に海洋観測により得られるデータ量も膨大となり,観測技術の進歩とともに,データ処理・解析技術も大きく進歩してきた.
 その分,素人が最新の海洋観測の全体を理解することが困難になりつつある.素人のみならず,海洋の専門家でさえ,少し専門分野が異なると,新しい観測技術の内容を理解することが困難なほど,近年の海洋観測技術の発達は目覚ましい.
 しかし,先述したように地球環境問題に対する海洋観測の重要性を考えると,なるべく多くの人が現在の海洋観測の実態を理解しておくことが望ましい.
 そこで,初心者にもわかりやすいように,筆者の経験をもとに,現在の海洋観測の全体像を俯瞰できる書物をまとめて見ようと思い立った次第である.

第 1 章 はじめに
第 2 章 海洋観測の分類
第 3 章 海洋観測の歴史
第 4 章 船舶観測
第 5 章 観測塔・ブイ
第 6 章 係留系
第 7 章 曳航体・海中ロボット
第 8 章 リモートセンシング
第 9 章 HFレーダー
第 10 章 ADCP
第 11 章 音響トモグラフィ
第 12 章 おわりに

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