日本の天文学の百年 ※美本ご用意出来ません

One Hundred Years of Astronomy in Japan

日本の天文学の百年

五〇名超の執筆陣による日本天文学発展史

著者 日本天文学会百年史編纂委員会
ジャンル 天文学 > 天文学史・星座
出版年月日 2008/03/13
ISBN 9784769910787
判型・ページ数 B5・378ページ
定価 本体3,300円+税
在庫 在庫僅少

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江戸幕府天文方の西洋天文学導入から、国際的な学術成果をあげ続けるすばる望遠鏡まで、我が国天文学の百年にわたる発展史とその業績を様々な分野ごとにまとめた日本天文学会創立百周年記念本。総勢50名を超える執筆陣が、歴史的に貴重な写真や資料、最先端の研究成果を紹介し解説する。


はじめに

 日本がハワイに建設した口径8.2mの「すばる望遠鏡」や日本が打ち上げた科学衛星による天体の素晴らしい画像,そして科学的発見についての記事が新聞や雑誌などを賑わせている.宇宙を研究する「天文学」は,もっとも古い学問であるが,同時に最先端の学問でもある.天文学のこの百年の進展は,当事者である天文学者にとってさえ,日々が新鮮に映るほど目覚しいものがある.特に最近では,この天文学の発展に日本人天文学者も大きな貢献を果たすようになってきた.しかし,このような華々しい活躍と発展を可能にしたのは,多くの先人達の努力の上に築かれたものであることを忘れてはならない.

 日本天文学会が2008年に創立百周年を迎えるにあたり,百年史編纂事業として日本における天文学百年の歩みを1冊の本にまとめることになって,できあがったのが本書である.これは単なる一学会の百年史だけでなく,日本における天文学全体の百年の歩みを広く取りまとめるという大変意欲的な試みである.

 今から百年前の20世紀初頭の世界および日本の天文学はどのようであっただろうか.20世紀初頭といえば,物理学では「量子力学」と「相対論」という20世紀を代表する2つの新しい物理学がまさに始まろうとしていた時代である.世界の天文学を見てみると,19世紀までは月や惑星の運動を研究するニュートン力学に基礎をおく「天体力学」と,暦や時や測地など実用に深く結びついた「実地天文学」が2つの大きな柱であったが,この物理学の革新に伴い,新たに天体の物理状態を研究する「天体物理学」が起こってきた時期に対応する.しかし,それはまだ端緒についたばかりの時代である.例えば我々に一番身近な太陽の場合,黒点の存在自体は古くから知られていたが,ヘールによって黒点の磁場が発見されたのは,日本天文学会がスタートする1908年のことである.また,“アンドロメダ星雲”が銀河系内の天体なのか銀河系外の天体なのかについてのシャプレーとカーチスによる「島宇宙論争」が行なわれたのは,1920年のことである.

 一方,当時の日本に目を向けると,日本全国あわせても,天文学者の数が十数人を超えるかどうかという状態であった.そして,当時(明治時代)の日本における学問全般にいえることではあるが,天文学においても西洋の天文学を輸入し,それを吸収するということで精一杯という段階であった.そうした中で,木村栄が緯度変化の観測データ解析に「木村のZ項」導入を提案したのが1902年で,これが世界的にも高く評価されたのは,画期的な出来事であった.
 日本天文学会が創立された1908年から100年間で,日本の天文学はどのような変貌を遂げたであろうか,興味津々である.本書は,まさに日本における天文学のこのような変貌を記録に残そうと試みたものである.

 本書は,全体を大きく分けて,5部から構成されている.まず第I部「勃興期」は百年史の前半50年(1908年から1957年)を扱ったもので,5章からなっている.すなわち,東京,京都,仙台,水沢と当時主な天文関係機関があった4つの地域について,人のつながりを中心に記述したものである.また,それに先立つ日本天文学会発足以前のことも「前史」として江戸幕府の天文方の話から説き起こしている.
 第II部「発展期」は,1958年頃から現在に至る百年史の後半50年を記述するもので,全部で16章からなる本書の主要部分である.第2部の前半では,どんどん活発になっていった各分野の研究について,宇宙論,銀河・銀河系からから始まり,恒星,太陽,太陽系など,さらには天文学史にまで至る研究分野を10章に分けて記述した.また,第II部の後半では望遠鏡建設や観測所の紹介など観測手段について,光,赤外,電波,X線など電磁波の波長を中心に5章に分けて記述,さらに数値実験についての章も付け加えた.第II部は,ところによって専門用語が出てきて,専門外の読者には読み難い部分もあるかもしれない.これら専門用語のいくつかについては巻末に用語解説をつけて,簡単な解説を試みた.また,本書と平行して出版が進められている日本天文学会百周年記念出版,シリーズ「現代の天文学」全17巻も参照されたい.

 第III部「天文学と社会」では,アマチュアの活躍,天文学の教育と普及,天文学の本についての3章からなり,天文学と社会との結びつきについて記述した.

 第IV部「インタビュー」では,天文学会の大御所,すなわち藤田良雄,林忠四郎,古在由秀の三氏のインタビュー記事,第V部「日本天文学会の歩み」では,(1)「日本天文学会」自身の百年の歩み,(2)日本天文学会の資料,そして(3)日本における天文学,この百年の歩みを示す歴史年表からなっている.

 また本文とは別に,エピソードや各章に関連した短い文を「コラム」として,ところどころに挿入して,少しでも読者に読みやすいようにした.また,巻頭には,カラーグラビアページを設け,昔の由緒ある写真や最先端の研究成果の写真などを載せた.

 本書ではコラムのような短い記事も含めると,執筆者が50名を超えている.そのため,章ごとに文章のスタイルなどに個性が出るのはやむを得ないことと考えた.

 本書の各章は,一応独立した読み物になっているので,読者が興味のあるところから読み始めることができるようになっている.しかし,全体を通して読んでいただくと,日本の天文学のこの百年の歩みがわかるので,是非,本書を全体として通読していただきたい.

第I部 勃興期
第 1 章 日本天文学の黎明
第 2 章 東京における天文学の半世紀
第 3 章 京都における天文学の草創と伝統
第 4 章 杜の都に新たな息吹
第 5 章 緯度観測所90年の歴史

第II部 発展期
第 1 章 進化する宇宙と宇宙論
第 2 章 銀河の世界
第 3 章 活動銀河の謎
第 4 章 恒星の世界
第 5 章 ブラックホールと連星
第 6 章 星間を漂うガス雲
第 7 章 母なる太陽
第 8 章 太陽系の姿と成り立ち
第 9 章 天体の位置と運動
第10章 天文学史
第11章 光の天文台
第12章 赤外線天文学の歩み
第13章 電波天文学
第14章 X線・ガンマ線のスペース天文台
第15章 高エネルギーと重力波の天文台
第16章 数値実験の発展

第III部 天文学と社会
第 1 章 日本のアマチュア天文学
第 2 章 天文の教育と普及
第 3 章 天文学の本

第IV部 インタビュー
第 1 章 藤田良雄先生へのインタビュー
第 2 章 林忠四郎先生へのインタビュー
第 3 章 古在由秀先生へのインタビュー

第V部 日本の近代天文学の歩み
第 1 章 日本天文学会の百年
第 2 章 日本天文学会資料集
第 3 章 年表:日本の近代天文学

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