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生鮮マグロ類の高品質管理

漁獲から流通まで―水産学シリーズ165

生鮮マグロ類の高品質管理

マグロ流通の課題「ヤケ肉」の原因を分析

著者 今野 久仁彦
落合 芳博
福田 裕
ジャンル 水産学 > 水産学シリーズ
食品学 > 食品化学・食品加工
シリーズ 水産学シリーズ
出版年月日 2010/04/01
ISBN 9784769912156
判型・ページ数 A5・152ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 オンデマンド制作

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消費量の多いマグロ産業にとって、「ヤケ肉」による損害は大きな悩みである。その発生原因の解明と防止に向けての最新の研究成果をまとめている。マグロの品質管理の向上は資源管理の改善にもつながる課題である。マグロ類の生理的な特徴から詳細にまとめた本書は、日本の水産業と水産研究の成果を凝縮させた内容となっている。


はじめに

 マグロ類で見られる「ヤケ肉」の現象は, 日本近海の養殖漁業、旋網漁業, 一本釣漁業などのいずれでも起こり, 関連産業にかなりの損害を与えている.「ヤケ肉」発生機構の解明と防止法の開発は高品質マグロ肉の安定供給のために重要な課題である.「ヤケ肉」とは,マグロ肉特有の赤色が透明感のない白色に変わり,時間が経過するとさらに褐色へと変化する現象である.同時に肉質は粘稠性が低下し水っぽい食感となり,ひどい時には身割れや筋肉組織の崩壊が起こる場合もある.また,ヤケ肉は強い酸味やエグ味を呈することが多い.したがって,刺身など生食用としてはもちろんネギトロなどの加工品にも使えない場合が多い.
 しかし,「ヤケ肉」は魚体の外側からは見えないので漁業者が発見することは稀であり,生産現場から離れた消費地市場などでマグロが解体されて初めて発見されるため,原因と結果の関係を結びつけることは困難であり,防止対策は不明のままであった.本書は, 農林水産省の新たな農林水産政策を推進する実用技術開発事業(旧 先端技術を活用した農林水産研究高度化事業)「大型魚の漁獲ストレス緩和技術導入による高鮮度維持システム開発(2007~2009年度)」の参画研究者と近畿大学の研究者グループの最新の成果をまとめたものである.いずれもマグロ類関係漁業者の全面的な協力のもとで「ストレス」をキーワードに挑戦した内容であり,最新の科学的知見と現場で対応できる提案が盛り込まれたと自負している.
 これまでのマグロ「ヤケ肉」に関連した国内の研究を紐解くと,金光庸俊氏が1962年に大洋研究所の報告書に発表したのが最初と思われる.ヤケ肉はマグロの体幹中心部ほど強く生じ,筋肉タンパク質に著しい変性が起きていることが報告された.
1978年に小長谷史郎氏らは,筋肉タンパク質のin vitro実験でマグロ「ヤケ肉」の原因は高体温と低pHの相乗作用であることを提唱した.その他ブリなどでも同様の研究が行われてきた.一方では早くから, 豚肉などで起こるWatery Pork現象が問題となり,高体温と低pHの相乗作用に加えて遺伝形質にも左右されることが報告されている.
 本書の内容を少し紹介する.ヤケ肉の原因として,高体温と低pHの相乗作用についてモデル実験と現場での膨大な実測データから,ヤケ肉発生の危険性の高い温度・pH域を説明できるところまで到達できたと思われる.一方, ストレスに対応する生物応答についても解明が進められた.また,ヤケ肉とミオグロビンの変化の関係も単純でないことが新たに分かってきた.さらに,「ヤケ肉」を防止するためのマグロのストレス緩和方法,漁獲時の取り上げ方法,魚体処理法,冷却方法などについて提案をまとめることができた.

 この「ヤケ肉」の問題は,程度に差はあるものの高速で遊泳する赤身魚全般に共通した現象であり,その中で最もドラスティックな現象がマグロ類で起こっていると考えられる.それゆえ、ここで記述されている内容は、マグロにとどまらず、広範囲に応用可能であることを強調したい.本書は水産業と水産研究のノウハウとシーズが随所に満ち溢れており,マグロ関係者だけでなく多くの漁業関係者,研究者,行政担当者,食品関係者等にぜひ手に取って読んでいただければ幸いである.また,適正な資源管理の下で量よりも品質をより重視する水産業を支援するために書かれた科学書であることを読み取っていただければ,望外の喜びである.

I.漁業,流通,および品質の現状
1章 マグロ類漁業,流通の現状(小野征一郎)
2章 クロマグロ漁業の操業形態と肉質(小谷幸敏・石原幸雄・石川 哲)
3章 養殖マグロでみられるヤケ肉の発生要因とその肉質性状(福島英登・田中竜介・福田 裕)

II.死後変化とヤケ肉発生のメカニズム
4章 マグロ筋肉タンパク質の変性(今野久仁彦)
5章 ヤケ肉における変色機構(落合芳博)
6章 漁獲ストレスと生体反応(山下倫明)
7章 ヤケ肉の非破壊検出に向けた取り組み(木宮 隆・岡﨑惠美子・平岡芳信)

III.ヤケ肉発生防止法
8章 養殖技術改良によるマグロ類肉質の劣化防止(塚正泰之)
9章 ストレス緩和によるマグロ類ヤケ肉防止(塩谷 格・田代 高)
10章 神経処理・脱血処理によるマグロ類ヤケ肉防止(前田俊道・福島英登・福田 裕)

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