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日本産水産物のグローバル商品化

その戦略と技術―水産学シリーズ170

日本産水産物のグローバル商品化

サンマの高付加価値化と輸出事業化への戦略

著者 木村 郁夫
岡崎 惠美子
村田 昌一
ジャンル 水産学 > 資源・漁業
水産学 > 水産学シリーズ
シリーズ 水産学シリーズ
出版年月日 2011/09/20
ISBN 9784769912583
判型・ページ数 A5・158ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 オンデマンド制作

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国内水産業が衰退傾向ななか、世界的には水産物需要の高まりに対して供給量が不足している。日本の水産業を活性化する取り組みの一つとして、サンマを例に、日本水産物を価値の高いグローバル商材として新規マーケットへ売り込む戦略と技術を探る。高付加価値化を図ることでサンマ商品を輸出事業のモデルとして考察する。


はじめに

 日本の水産業を取り巻く環境は,大きく変化している.水産資源量の低下,漁業や水産加工従事者の高齢化と減少,日本国内の人口減と高齢化,魚離れなどである.さらに,東日本大震災と津波・原子力発電所事故による甚大な被害が発生し,復興に向けて大変な努力が払われている.日本の中だけをみると水産業の環境は厳しくて衰退しているという議論となるが,日本の水産業が培ってきた底力と資源は優秀であることは疑いの余地はなく,必ず活性化すると考える.

 一方,世界に目を転じると,人口爆発による急激な人口増加や水産物の安全性や健康機能効果が評価されて水産物需要の高まりがあるのに対して,漁獲量の頭打ちがあり,需要に対して供給量が不足する状態となっている.日本の水産物は,世界の貴重な食料資源でもある. 以上のような状況から,日本の水産業を活性化する取り組みの一つとして,日本の水産物を価値の高いグローバル商材として受け入れる「新規マーケットの創出」が必要である.我々はこのような取り組みを実現する可能性の高い漁業資源として,サンマに注目した.サンマは日本近海から東部太平洋にかけて幅広く分布し,年度により300~800万tの資源が存在しているが,わが国では国内マーケットの需要が飽和しているためにこれを十分に活用できない状況にある.新たな市場が創出されれば,サンマの資源量と漁獲量から,さらに20万t程度の漁獲量の増大が見込める.
 日本で高度な加工をすることによりサンマを一層価値のある資源として活用することができれば,国際競争力のある製品として輸出を図ることもでき,またサンマ需要の拡大により,現在厳しい状況にあるサンマ漁業の経営を安定化させることも可能となってくる.

 このような状況の下,農林水産省による先端技術を活用した農林水産研究高度化事業委託研究「サンマのグローバル商品化のための高鮮度・高効率加工技術の開発」(平成19年~21年)が行われた.サンマは独特の細長い形状をしており,海外ではなじみのない魚である.また海外では赤身魚を食べる習慣のある国は少ない.血合肉を多く含み,鮮度低下に伴って生臭さが発生することを克服しなければ,海外では受け入れにくいことが予想された.魚特有の生臭みの原因はトリメチルアミンオキシド分解物などであるが,鮮度が非常に良いときには生臭みがないため,高鮮度状態でワンフローズン加工すれば,生臭みの少ない製品化が可能となることを期待した.そのためにも,船上で漁獲後直ちに魚体処理を行い,すり身やフィレに加工できるようなシステム作りも想定した.また,食習慣や嗜好の異なる海外の相手先のニーズを現地調査などにより的確に把握するとともに,これに適応した味や形に加工を施すための技術開発が必要となる.現在は,世界的な水産物需要の高まりで,フィレ・冷凍すり身の価格が高い状況にある.ミール・魚油についても原料の不足と養殖飼料としての需要増から世界的に相場が高騰している.資源量が多く安価なサンマを価値の高いものにするためには,フィレなどの単品生産ではなく,フィレ・すり身・ミール・魚油などを同時に製造する「カスケード加工」による,無駄のない総合的な加工処理技術を構築することも重要である。 さらに,加工用原料として利用されるフィレ・ブロックへの加工には人手がかかるため,加工コストを下げるために加工処理の全自動化を図る必要がある.その際,特有の形状をもつサンマでは,他魚種で開発された全自動フィレ処理システムをそのまま利用することはできない.サンマに適した独自の全自動魚体処理システムを構築する必要がある. 以上のように,サンマ加工品を将来のグローバル商品として捉え,その実現に向けた取り組みを推進するためには,種々の異なった角度からの検討が必要である.さらに,EUや米国へ輸出を行う場合は,漁獲から加工・流通をカバーするHACCPやトレーサビリティシステムの適応が必要である.日本の水産業の技術レベルは高いものの,EU-HACCPやトレーサビリティシステムへの対応が遅れており,日本から簡単には輸出できない状況となっている.このため,本プロジェクト研究は,生原料段階での加工処理など,漁獲・処理加工・流通を一貫したマーケット視点での戦略をもって,産学官による組織を越えた連携により実施された.いいかえれば,日本の水産業の活性化のためには,単純な技術開発だけでは対応は難しく,各分野の「知」を統合した戦略をもった取り組みが必要な状況であるといえるであろう. 本書は,本プロジェクトで得られた研究・開発成果の内容を中心として,関連する最新の知見を整理し,今後の日本の水産業の活性化に資することを目的にとりまとめたものである.日本の近海で漁獲される貴重な水産資源であるサンマの価値を高めるとともに,価値の高い水産物輸出に向けた事業実現に必要となる取り組みモデルとして,関係者のご参考になれば幸いである.

Ⅰ. 水産物のグローバル価値と流通
 1章 世界の水産物流通動向とグローバル戦略
 2章 水産物輸出の過去・現在と未来
 3章 サンマ資源状況と国内および国際的漁業動向
Ⅱ. 競争力のあるグローバル商材とするための技術(サンマを事例に)
 4章 全自動フィレ処理システム装置の開発
 5章 冷凍すり身化技術
 6章 冷凍フィレの品質と保存性
 7章 酸素処理による高鮮度品質維持
 8章 ミール・魚油性状と養殖魚飼料評価
Ⅲ. グローバルマーケットの創出
 9章 フィレのEU市場の評価
 10章 HACCP対応

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