新刊

水圏微生物学の基礎

水圏微生物学の基礎

最新の知見に基づいて水圏環境の中での微生物の分布、多様性、機能、相互作用などを包括的に記述。

著者 濵﨑 恒二
木暮 一啓
ジャンル 海洋生物学 > 生理・生態
出版年月日 2015/09/17
ISBN 9784769915683
判型・ページ数 B5・280ページ
定価 本体3,800円+税
在庫 在庫あり

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最新の知見に基づいて水圏環境の中での微生物の分布、多様性、機能、相互作用などを包括的に記述。特に水圏中の微生物の特性、生態系に対する役割を明らかし、水圏生態系そのものがどのように維持されているのかを、地球スケールでの事象の中で捉える。また微生物の機能を利用した試みについて紹介。大学、専門学校、高等専門学校のテキストに最適。

 


はじめに

 水圏微生物の最初の観察は,17 世紀にまで遡ることができる.レーベンフック(1632-1723)は,オランダのデルフト市で織物商を営む傍ら,自作の高性能単レンズ顕微鏡を用いて様々な試料を観察し,その結果をロンドン王立協会への書簡として報告している.一連の書簡の中で原生動物と細菌の最初の観察記録とされているのが,1676 年10 月に送られたものである.そこには,雨水,河川水,井戸水,海水の中に多くの“小動物” が存在することが記されている.レーベンフックの報告は,王立協会が出版する科学専門誌Philosophical Transactions に掲載され,当時の多くの科学者の興味を集めたようである.その後およそ2 世紀を経た19 世紀に入ると,細菌の分離や純粋培養技術が確立され,実際にこれらの“小動物” を対象とした学問分野である微生物学が始まる.
 「どこに,どんな微生物がいて,何をしているのか?」という問いは,300年前のレーベンフックの観察以来,水圏微生物学における最も基本的な問いの一つであろう.微生物は地球上に最初に現れた生物として,地球環境の維持,変遷に基盤的役割を担ってきた.同時に,動植物を含む他の生物とも密接な関わりをもちながら多様な機能をもつ生物群として進化し,今に至っている.地球環境や動植物を含む生態系がどのように維持されているかを理解するには,微生物について知ることが不可欠であるが,その生物としての特徴や環境に対する役割は未だに十分には解明されていない.
 スプーン一杯の海水中には百万を超える細菌が生きているが,そのうち9割は未だ培養されたことのない未知の細菌種とされている.19 世紀から現在まで,微生物学は顕微鏡観察と培養を基本に発展してきたが,培養できない微生物の存在は,環境微生物の多様性やその役割についての全体像を把握することを困難としてきた.しかし,近年の培養に依存しない方法論の発展により,この研究領域は急速に新たなステージへと移行してきた.これまで未知だった機能や相互作用などが次々と解明され,地球環境の理解に新しい方向性を示しつつある.さらに,遺伝子配列の解読技術が,次世代シーケンスと呼ばれる技術の登場によってこの10 年間で革命的ともいえる進歩を遂げており,Human Microbiome Project やEarth Microbiome Project といったヒトや地球に関わる微生物群集の多様性とその機能を包括的に理解しようとする研究が進められている.
 本書は,こうした最新の知見に基づいて水圏中の微生物の特性を理解すると共に,その生態系における役割を明らかにするため,水圏環境の中での微生物の分布,多様性,機能,相互作用などを包括的に記述することを目指した.地球環境問題が様々な形で顕在化していることをふまえ,水圏生態系が微生物の働きによってどのように維持されているかを地球スケールの事象の中で考えるための基礎となれば幸いである.
 本書のユニークな特徴として,各章の冒頭にその章のテーマに対する疑問を提示し,理解して欲しい事柄を質問形式で明示してある点が挙げられる.それぞれの章では,提示された疑問への回答を示すように構成,執筆されている.まずは質問リストを眺め,それから各テーマへの疑問をもちつつ読み進み,自分なりの回答が得られたならば,その章の内容を理解できたことになるだろう.各章末には「まとめ」として冒頭の質問への回答を簡潔にまとめ,さらに理解を深めるきっかけとして「学習課題」を挙げてあるのでぜひ取り組んでみて欲しい.
(後略)

1章 水圏環境の特徴と微生物(木暮一啓)
 水の性質
 地球上の水の分布と循環
 水界に分布する化学物質と生物活動
 微生物とは
 微生物はどのような構造をしているのか

2章 微生物の分布(濵﨑恒二)
 水中と水底の微生物分布
 極限環境に生息する微生物
 微生物の生物量
 バイオフィルム

3章 水圏微生物の特性(澤辺智雄・澤辺桃子・美野さやか)
 微生物の増殖と海洋環境への適応
 微生物の増殖と温度
 微生物の増殖と圧力

4章 微生物の系統と進化(澤辺智雄・美野さやか)
 生命の起源
 微生物の進化
 微生物進化研究法

5章 微生物の多様性(濵﨑恒二)
 微生物種の定義と多様性
 微生物多様性の評価手法
 微生物多様性の特徴
 微生物の多様性と環境要因

6章 有機物を作り出す微生物(春田 伸)
 光合成微生物の多様性
 化学合成独立栄養微生物
 生物のもつ多様な炭酸固定経路

7章 微生物による有機物分解(鈴木 聡)
 微生物による有機物の分解
 有機物分解の起こる環境
 有機物分解に及ぼす環境要因
 科学汚染物質の分解

8章 微生物の捕食者(福田秀樹)
 微生物の死滅要因
 原生生物をはじめとする大型の捕食者による捕食
 ウイルスおよびBALOsによる感染に伴う溶菌

9章 食物網の中の微生物(永田 俊)
 従属栄養細菌による有機物の分解と菌体生産のバランス
 食物連鎖による炭素の転送
 微生物と魚類生産

10章 微生物による生元素循環(永田 俊)
 有機物の生産と分解およびそのストイキオメトリー
 微生物による窒素循環の駆動
 リン酸の循環と微生物

11章 嫌気環境の微生物(砂村倫成)
 微生物のエネルギー代謝
 水圏の嫌気環境
 嫌気環境における代表的な微生物反応
 エネルギー獲得をめぐる微生物間での競合関係

12章 他生物との相互作用(和田 実)
 海洋微生物が関わる共生相互作用の多様性
 海洋微生物と宿主の共生を支える生態学的メカニズム
 海洋微生物と宿主の共生をさせる分子メカニズム
 海洋微生物の病原性の進化と環境の関わり

13章 水圏微生物と人の関わり(澤辺智雄・澤辺桃子・鈴木 聡・砂村 倫成・永田 俊・濵﨑恒二・春田 伸・和田 実)
 地球温暖化を防げるか
 環境汚染を消せるか
 窒素過剰負荷を軽減できるか
 赤潮を消すことができるか
 水圏微生物は人に感染するか
 魚介藻類の微生物感染症を防げるか
 金属資源を作れるか
 食用シアノバクテリアは未来の食糧になるか

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