新刊

現代若者の幸福

不安感社会を生きる

現代若者の幸福

不安感漂う現代社会に生きる“幸福”な若者たちの姿を、20年にわたる継続的な調査データをもとに様々な角度から分析する。

著者 藤村 正之
浅野 智彦
羽渕 一代
ジャンル 社会学 > 社会心理・マスコミ・文化
出版年月日 2016/02/29
ISBN 9784769915775
判型・ページ数 A5・224ページ
定価 本体2,400円+税
在庫 在庫あり

この本に関するお問い合わせ・感想

2002年から2012年の10年間で、中高生の幸福度が顕著に増大した。不安感漂う現代社会において、若者たちにどのような変化があったのか。現状はどうなっているのか。1992年、2002年、2012年の継続的な調査データから、友人や恋人などの身近な人々との関係のあり方、メディアの利用形態、音楽や読書など趣味活動についての意識や行動の変化などから、今を生きぬこうとする若者たちの幸福の成り立ちを考える。


はじめに

 私たちは,社会学の領域を中心に学際的で,複数の大学・研究機関に所属するメンバーによって構成される青少年研究会というゆるやかな研究グループを,メンバーの世代交代もありながら,30年間にわたり継続してきた.現代は青少年という言葉よりは若者ということが多く使われるわけだが,研究会の名称に青少年という言葉が使われているのは,そのような時間幅の経緯による.
 研究会は個々人のあるいは有志による継続的な研究活動とともに,10年間に1度の大型調査の企画・実施に取り組んでおり,2012年末におこなわれた3回目の調査に基づく研究成果が本書である.折々の研究調査では,その時代ごとの関心と人生段階における青少年の変わらぬ部分への関心が分析の観点として扱われてきた.本書のねらいと研究内容は本文をお読みいただくことになるが,私たちがたどりついた,ひとつのテーマが『現代若者の幸福』ということであった.

 研究会の初代会長である高橋勇悦氏が編者の『青年そして都市・空間・情報?その危機的状況への対応』(恒星社厚生閣)の出版は,研究会草創期の約30年前である.ここで,高橋氏は青少年に対する危惧について取り上げる意義を謳っている.
 1980年代後半の日本は,バブル経済を突き進み,経済大国としての道を歩み,大きな時代のうねりのなかにいた.そして,そのなかで青少年の問題は,「自殺」「いじめ」「新人類」であったようである.このうち,「新人類」以外は,30年たった現在でも深刻な状況にある(もしかしたら,現在,還暦を迎えようとしている50歳代後半の「新人類」だった世代も別の意味で問題を抱えているかもしれないが).
 この頃,青少年研究会は「青少年問題研究会」という名称であり,青少年がどのような問題に直面しているのか,身近なところから関心をもって研究してきたとされている.青少年人口が減少,家庭生活と学校生活の危機的状況,地域社会の解体とメディア環境の強化という社会状況の下,生活技術に関わる青少年の社会化や個人化/私事化,人間関係や自然環境からの疎外,社会的価値の解体を危惧している.研究会の名称から「問題」が消えた現在でも,大枠のところでは,イッシューについてドラスティックな変化はみられない.それどころか,人口減少はとどまるところをしらず,家庭生活は貧富の二極化が進み,限界集落や消滅集落の問題がとりざたされ,ケータイ(スマホ)やインターネットなどの情報機器の使用は当然のインフラとなった.
 この30年間,日本の青少年について,同じトピックを扱い,そして,実証的な研究をおこなってこられたことは,先人の先見の明によるものである.巨人の肩に乗って見える景色が,これほどまでに同じような問題の荒野だとするならば,これらの研究蓄積を生かし,私たちは社会的に貢献する活動をはじめる時期にきているのかもしれない.

 個々人の幸福のかたちは,それぞれあって良いだろう.しかし,その幸福はより望ましい社会の仕組みのもとで保障されるのではないかと考えている.私たちはどのような社会の仕組みの構想に取り組んでいけるのか.

序章 青少年研究会の調査と若者論の今日の課題(浅野智彦)
1章 21世紀初頭の若者の意識(羽渕一代)
2章 Jポップの20年―自己へのツール化と音楽へのコミットメント(木島由晶)
3章 友人関係の変容―流動化社会の「理想と現実」(辻 泉)
4章 自己啓発書の位置価―誰が,何のために読むのか(牧野智和)
5章 経済的成功に対する若者の意識の変容―個人的な要因の衰退と非個人的な要因の台頭(寺地幹人)
6章 「情熱」から「関係性」を重視する恋愛へ―1992年,2002年,2012年調査の比較から(木村絵里子)
7章 若者におけるメディアと生活の相互関係の変容―2002年と2012年の時点間比較(阪口祐介)
終章 比較の中の若者たち(藤村正之)

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