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新技術開発による東日本大震災からの復興・再生 184

新技術開発による東日本大震災からの復興・再生

東日本大震災からの復興・再生に向け、地域再生、海藻利用、品質保持・加工技術を柱に水産関連の新産業創生を図りその成果をまとめた

著者 竹内 俊郎
佐藤 實
渡部 終五
ジャンル 水産学 > 水産学シリーズ
シリーズ 水産学シリーズ
出版年月日 2017/03/30
ISBN 9784769916017
判型・ページ数 A5・142ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 在庫あり

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東日本大震災で深刻な被害を受けた漁業および水産関連産業だが、文部科学省はその復興・再生に向けた取り組みとして水産・海洋学関連学会で東北マリンサイエンス拠点形成事業を立ち上げた。地域再生、海藻利用、品質保持・加工技術の3項目から漁業、増養殖、加工、環境の現場での新産業創生を図り研究の成果をまとめた。

 


まえがき 

 2011 年3 月11 日に東北太平洋沖で発生した大地震は巨大津波の襲来をもたらし,沿岸地域の漁業および水産関連の職業に携わっていた住民の生活を一瞬のうちに破壊し,地域社会を崩壊させてしまった.さらに,巨大津波の直撃を受けて漏洩した東京電力福島第一原子力発電所の放射能は,海洋汚染をもたらし,漁業および水産関連産業に深刻な影響を未だ与えている.


 水産・海洋科学関連の学会では大震災発生直後から,このような事態に対して概ね学会ごとの個別の対応を行ってきたが,大震災が沿岸社会に与えた影響は複雑で,その復興・再生にあたっては,様々な視点や角度からの総合的な取り組みが必要であることがわかったものの,学術団体のみでは資金的に限界があることも明らかになった.この間,各省庁や機関においてもそれぞれ復興・再生支援事業が精力的に進められてきたが,その中で,水産業の再生・復興に向けた取り組みとして,文部科学省は東北マリンサイエンス拠点形成事業を立ち上げた.この事業で水産・海洋科学関連学会の会員が活躍することとなった.

 本事業は大きく2 つに分かれているが,その1 つである「新たな産業の創成につながる技術開発」については2011 年度からの5 年間の事業として推進された.まず,フィージビリティ・スタディが2011 年度に行われ,2012 年度から4 年間の継続事業の取り組みとなった.フィージビリティ・スタディでは16 の課題が採択され,その後,2012 年度当初において,成果をもとにした
再度の選定が行われ,そのうちの8 課題が4 年間の継続実施となった.


 その成果は日本学術会議食料科学委員会水産学分科会主催のシンポジウム(「東日本大震災からの水産業および関連沿岸社会・自然環境の復興・再生に向けて(第2 回)」:2014 年11 月21 日,日本学術会議講堂)で取り上げられるとともに,2015 年9 月25 日には多くの方々の参加を得て,被災地の東北で開催された日本水産学会のシンポジウム(「東日本大震災からの復興・再生に向けた新たな水産業の創成につながる新技術開発」:東北大学川内北キャンパス)で紹介された.本書は後者のシンポジウムの内容を踏襲している.


 本書で取り上げた水産業の新たな産業の創成につながる新技術開発の8 課 題について,大きくI.地域再生,II.海藻利用の新たな取り組み,III.新たな品質保持・加工技術,の3 項目に分けて記載している.

 I.では,環境に配慮した漁業やエネルギー生産として1 章「排熱を活用した小規模メタン発酵による分散型エネルギー生産と地域循環システムの構築」,2 章「津波による油汚染と漁場の浄化技術」,3 章「東北サケマス類養殖事業イノベーション」,の3 課題について,II.では,より効率的な新品種の作出や養殖技術の確立,低利用水産物の健康機能を付加した利活用として,4 章「三陸における特産海藻類の品種改良技術開発と新品種育成に関する拠点形成」,5 章「三陸産ワカメ芯茎部の効率的なバイオエタノール変換技術開発と被災地復興への活用法の提案」,6 章「三陸沿岸域の特性やニーズを基盤とした海藻産業イノベーション」,の3 課題について,III.では,漁獲物の品質を保ちながら利用加工の道を開く技術として,7 章「高度冷凍技術を用いた東北地区水産資源の高付加価値推進」,8 章「電磁波を水産物加工に用いた新規食品製造技術開発」の2 課題についてそれぞれ記載した.


 いずれも水産現場で解決が求められてきた課題であり,多くの水産学研究者が取り組んで果たせなかった難題であった.このトータル5 年間で得られた新技術研究成果を成書にまとめておくことは,漁業,増養殖,水産加工,水圏環境の現場に携わる方々の強力な手引書になるとともに,様々な分野の水産学研究者には問題解決への取り組み方法の端緒になると考える.


 本書では,上述した内容に加え,最初に「発刊に寄せて-本技術開発に至る経緯-」として,本事業の主体となる文部科学省海洋地球課に本事業の趣旨を含めた経緯について記載していただいた.さらに最後に,シンポジウムのまとめを行った婁教授に,「まとめ-水産業の復興再生に向けた今後の課題」と題して,種々の議論の取りまとめや現地の企業など様々な方々との意見交換を行った内容について,記載してもらい,新産業創生を図る手立ての一助にすることを目的に,上記2 項目を設けた.


 今回の内容は,これまでシンポジウムの後に発刊される日本水産学会監修の水産学シリーズとは異なり分野が広く,震災に特化した内容であることから,恒星社厚生閣の取り計らいで水産学シリーズの特別号として発行されることとなった.ここに厚くお礼申し上げる.そして本書が,震災復興を図る企業や行政の方々のみならず,広く一般および学生,大学院生の皆様にも読まれることを切に希望する.

発刊に寄せて-本技術開発に至る経緯-(林 孝治)/まえがき(竹内俊郎・佐藤 實・渡部終五)
I.地域再生 1章 排熱を活用した小規模メタン発酵による分散型エネルギー生産と地域循環システムの構築(多田千佳・中野和典)/2章 津波による油汚染と漁場の浄化技術(荒川久幸・池田吉用・和泉 充)/3章 東北サケマス類養殖事業イノベーション(潮 秀樹・北澤大輔・水野英則)
II.海藻利用の新たな取り組み 4章 三陸ワカメ養殖における品種改良と複数回養殖に関する技術開発(佐藤 陽一・阿部知子・福西暢尚)/5章 三陸産ワカメ芯茎部の効率的なバイオエタノール変換技術開発と被災地復興への活用法の提案(浦野直人・宮川拓也・井上 晶)/6章 三陸沿岸域の特性やニーズを基盤とした海藻産業イノベーション(宮下和夫)
III.新たな品質保持・加工技術 7章 高度冷凍技術を用いた東北地区水産資源の高付加価値推進(鈴木 徹)/8章 電磁波を水産物加工に用いた新規食品製造技術開発(佐藤 實)
まとめ-水産業の復興再生に向けた今後の課題-(婁 小波)

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