新刊

水産物の先進的な冷凍流通技術と品質制御 186

高品質水産物のグローバル流通を可能に

水産物の先進的な冷凍流通技術と品質制御

水産食品業の根本を支える冷凍技術の最新情報を日本水産学会水産食品分野の専門家が詳細に紹介。品質評価に関わる事項を詳解。

著者 岡﨑 惠美子 編著
今野 久仁彦 編著
鈴木 徹 編著
ジャンル 水産学 > 水産学シリーズ
シリーズ 水産学シリーズ
出版年月日 2017/03/30
ISBN 9784769916031
判型・ページ数 A5・164ページ
定価 本体3,600円+税
在庫 在庫あり

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水産物の冷凍に関する研究の最新情報とこれまでに蓄積されてきた知見をコンパクトにまとめるとともに、特に冷凍水産物の品質評価に必要となる重要な事項について、最新技術を網羅的に紹介した本書は、食品産業の現場、研究機関、大学、行政機関などで使い勝手のよい参考書である。

 


まえがき 

 

 世界の水産物貿易量は年々増加傾向にあり,それらのほとんどは冷凍されて 流通している.現在,わが国で漁獲される魚介藻類や水産加工品もその大半は 冷凍され,国内外の市場において品質,安全性,コストなどの面で熾烈な競争 を繰り広げている.水産物は,保管や流通のために冷凍技術をもっとも効果的 に利用している食品素材といえる. 

 水産物の生産は自然条件に大きく影響され不安定であり,生鮮では腐敗や鮮 度低下により品質低下が速やかに進行するため,加工原料の安定的な供給や長 期の貯蔵に冷凍技術の適用が不可欠である.最近の国際的な水産貿易の急速な 拡大は,冷凍流通網の発達が可能にしたものであり,冷凍技術なくして魚介類 のサプライチェーンは成立しないといえる.本書の1章において,近年の冷凍 技術の発展について総括的にまとめた.  

魚介類のタンパク質や脂質,組織構造などは畜肉に比べて著しく不安定な上, 魚介類の種類などによって体成分や酵素の働きおよび冷凍耐性が異なる.この ため,これら魚介類の個々の特性を把握して安定に冷凍保管し,解凍後にも高 品質を保持できるような高度な冷凍技術の開発が,今なお要求されている.過 去の冷凍水産物は冷凍すり身やマグロが主体であったが,消費者の嗜好変化や 地域ごとの特色を生かす動きを反映し,冷凍流通の対象魚種や用途も大きく変 遷している.一方で省エネ化・地球温暖化防止の必要性から,冷凍保管温度を 上昇させる動きもある.また,消費者の魚離れにより水産物の消費量は減少傾 向にある中,刺身や寿司への嗜好性は依然として高い.これら諸般の状況を反 映して,製品の高付加価値化や省エネ化を求める産業現場から多くの課題が投げかけられている.今後,生鮮状態に限りなく近い高品質な生食用の冷凍魚介 類を供給できれば,水産物の消費拡大や地域水産物のブランド化にも大いに貢 献できるものと考えられる.

水産物の冷凍技術は水産業・水産加工産業を支える最重要の技術であること は明らかであり,これを支える冷凍機器の技術開発は目を見張るものがある.一 方で,今後に向けての技術的課題は山積しているもののその事実は関係者間でも意外に共有されていない現実がある.  

例として,研究者も含めて一般には,「冷凍水産物の品質を決める要因として, 氷結晶が最も重要であり,冷凍水産物の高品質化は氷結晶をできるだけ小さくすることのみによって達成される」と堅く信じられている側面もある.しかし,生 鮮水産物の食品としての品質を決定づける第一要因はタンパク質や脂質の性状 変化であり,氷結晶のサイズの大小にかかわらず冷凍保管条件によってタンパク 質の変性などが進行することや,一般的な商用冷蔵庫の保管温度(−20−25℃) 程度ではタンパク質がすぐに変性してしまうため目的に応じた適切な保管温度 が確保されなければ商品価値が著しく低下してしまうことなどについては,正しく認識されているとはいえない現状にある.こうした中で氷結晶を微細化しさえ すれば水産物を高品質化できると信じ,保管温度への認識の欠如から失敗する例 が,残念ながら多く見られる.「生鮮魚肉のように未変性タンパク質を主体とする素材の場合には,氷結晶の微細化よりも,保管温度がまず優先されるべき」で あり,冷凍前の品質や前処理,凍結・保管・解凍に至るすべてのプロセスを,一括したシステムとして捉えることが重要であることについて,とくに2章,3 で述べた.

一方,タラコのような魚卵製品や練り製品などの加工品にみられるように,凍 結速度の遅速による氷結晶サイズの差異が製品の品質に大きく影響を及ぼす場 合も当然ある(23章).そのため,氷結晶サイズを正確に評価することは重要 であるが,過去に提案されてきた氷結晶評価のための手法は非常に煩雑かつ長時 間の前処理を伴うことから,このことがこの分野の研究の進展を阻む要因とも なってきた.近年になり,より迅速に正確な氷結晶観察法が種々考案されてきた ため,8章においてはこれらの方法を紹介するとともに,各種方法のメリット・ デメリットなども合わせ,個々の目的に応じた氷結晶の評価を示唆できる内容とした.  

本書の特色は,冷凍水産物の品質評価に必要となる重要な事項について,最新 技術を網羅的に紹介した点にある.過去に提案された方法についてはそれぞれ課 題点があり,近年になってようやくそれぞれの技術的な課題点が解決されてきた ところである.上述の氷結晶評価法(8章)をはじめ,魚介類の主成分であるタ ンパク質(9章)・脂質(10章)の評価,主な色調変化の要因であるミオグロビンのメト化評価(9章),品質劣化要因の一つであるホルムアルデヒド(5章), 寄生虫リスクの評価(6章)のいずれについても,今後,付加価値を高めた冷凍 水産物を開発し流通させていくための有用な指標として,是非ご活用頂きたい.  

さらに,本書においては,冷凍技術の新たな可能性についても言及した.近年, 水産物を冷凍する技術のみならず,周辺技術すなわち漁獲,鮮度保持および包装 技術なども飛躍的に発展してきているが,極めて高鮮度の魚介類に含まれるATP (アデノシン三リン酸)のタンパク質変性抑制効果により冷凍保管温度を緩和で きる可能性(3章,4章)や,冷凍温度帯においても生化学的反応が進行する現 象を利用した魚介類品質の制御(3章),また今後進展が期待される不凍タンパ ク質や過冷却利用の可能性(7章)についても,将来有望な技術としてご紹介した.  

以上のように,本書は,水産物の冷凍に関する現在の研究の現状と課題を整理 するとともに,これまでに蓄積された最新の知見を幅広く網羅したものである. 水産物に関連する産業現場,食品企業,食品研究機関,大学,行政機関などで, これらの内容を活用していただき,関連産業の発展に役立てていただくことを期待する.

平成293

岡﨑惠美子・今野久仁彦・木村郁夫・福島英登・鈴木 徹

I.冷凍基本技術の重要性と冷凍水産物の高品質化 1章 産業界における水産物冷凍の歴史と最新動向 (杉本昌明)2章 凍結‐保管‐解凍 3ステップシステムと品質(鈴木徹)3章 水産物の冷凍保管条件と品質(中澤奈穂・岡﨑惠美子) Ⅱ.冷凍水産物の品質制御技術 4章 筋肉内ATP による変性抑制(木村郁夫・緒方由美・井ノ原康太)5章 冷凍貯蔵下のホルムアルデヒド生成制御の効果(福島英登)6章 冷凍による寄生虫リスクの低減(竹内萌) 7章 新技術への展開(萩原知明・小林りか・君塚道史) Ⅲ.水産物の品質評価法の進歩 8章 迅速かつ簡易的な氷結晶・組織観察法(河野晋治)9章 タンパク質変性の評価(今野久仁彦・井ノ原康太)10章 脂質変化の評価法(田中竜介)

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